2006年10月15日日曜日

22 根室半島:昔の火山列がつく半島 2006.10.15

 納沙布(ノッサプ)岬は、北方四島を望む北海道の東端にあります。その納沙布岬を有する根室半島の起源をみていきましょう。

 北海道はいくつかの半島があります。半島の先端には岬があります。岬にはそれぞれの個性があります。その個性は、気象や天候などの日々変わるものから、大地自身の起源に端を発するものもあります。
 北海道の最東端は、根室半島の納沙布(のさっぷ)岬です。納沙布岬は、北方四島返還の最前線として、「北方館」や「平和の塔」などがあり、強い個性を持っています。
 道東は霧がよく出るところです。私は、今年のゴールデンウィークに出かけましたが、天気が悪く小雨と霧の寒い日でした。これが道東の天気だというかのような日でした。私には納沙布岬は「霧の岬」という印象があります。
 知床半島は世界遺産に選ばれたことから、現在も多くの観光客を集めています。納沙布岬も有名な観光地ですから、ゴールデンウィークで多くの観光客がいるかと思いきや、予想外に少なく、驚きました。道東の知床以外の観光地も、さびしく感じたの気のせいでしょうか。
 納沙布岬に以前にも訪れていますが、そのときは晩秋の、風の強い寒い日でした。ですから、私の納沙布岬の印象は、残念ながら、冷たく暗いものです。しかし、土産屋の中ではストーブが炊かれ、そこですするラーメンの暖かさは、一層おいしく感じました。
 さて、納沙布岬あるいは根室半島は、なぜ出っ張っているのでしょうか。こんな素朴な疑問を探ることが、大地の生い立ちを教えてくれます。大地をつくっている石をみれば、その答えが分かります。
 先ほども述べましたが知床半島にはたくさんの活火山があります。ですから、知床半島は、現在活動中の火山列が半島をつくっているわけです。ところが、根室半島には活火山はありません。しかし、根室半島には、マグマの活動でできた火成岩がたくさんあります。そのマグマは海底で堆積していた地層の中や海底で活動しました。マグマの活動は現在は終わっています。つまり、根室半島は、昔の火山列だったのです。
 マグマの活動時代は、地層の中から見つかる化石や放射性元素の年代測定から知ることができます。マグマの活動時期は、白亜紀後期だと考えられています。溜まっていた地層は、白亜紀後期から古第三紀に形成された根室層群と呼ばれるものです。根室層群の堆積初期の地層の中に、マグマが上昇してきました。
 マグマが海底まで噴出すると、海水にふれて急激に冷却されます。しかし、後からもまだマグマが続いて上がってきます。すると固まった表面を破ってマグマが海水中に噴出します。ねり歯磨きを押し出したようにマグマが出てきます。マグマは、やはり海水に触れて急冷されすぐに固まります。繰り返し起きます。その結果、枕を並べたようなマグマの積み重なりができていきます。このような状態の岩石を、枕状溶岩と呼びます。
 枕状溶岩の断面がみえるところでは、自転車のスポークのように放射状の割れ目が形成されています。納沙布岬の少し東南東の花咲では、直径1mから3mほどの枕状溶岩がたくさん海岸に出ています。大きなものでは、7.5mにも達します。花咲では、枕状溶岩が特に目立つので、車石と呼ばれて、天然記念物になっています。このような枕状溶岩が根室半島のいたるところにあります。
 マグマが海底に噴出せずに、地層の間に分け入ることもあります。貫入と呼びます。地層中に貫入したマグマは、地層の触れた部分はすぐに冷えますが、中のマグマは急激に冷えることはなく、ゆっくりと冷えてきます。すると大きな結晶へと成長する岩石ができます。根室半島の貫入岩には、厚さ150mもあるものが見つかっています。
 マグマがゆっくり冷えると、結晶ができて成長していきます。結晶はマグマとの密度の差によって浮いたり沈んだりします。結晶の移動に伴ってマグマの組成が変化していきます。すると新たな組成のマグマになり、違った性質の結晶が出てきます。冷えながらマグマが成分を変化させ、溜まった結晶が岩石として、層状に重なっていきます。最終的には、層状の貫入岩となっていきます。このような火成岩を、層状分化岩体と呼んでいます。
 結晶の違いや、岩石の化学成分の違いによって、層状分化岩体にはいろいろな岩石が形成されます。急激に冷えた上下の部分は、貫入してきたマグマがそのまま急に冷えた玄武岩になり、内部には重力の影響で、下から上に向かって黒っぽい岩石から白っぽい岩石(アルカリドレライトからモンゾニ岩、閃長岩)へと変化していきます。
 本来であれば、このような層状貫入岩体は地下深部にしかありません。しかし、根室半島では、マグマが深部でどのようにして変化し、多様な岩石が形成されるかが、地表で見ることとができるのです。非常に面白い岩石です。層状分化岩体は、根室半島では8ヶ所知られています。また、層状分化岩体は、根室半島より先の歯舞諸島にも連続していることが知られています。
 知床半島の火山活動と根室半島の火山活動は、時代の違いと、陸上か海中かの環境の違いだけではありません。他にも、マグマの性質が違っています。
 知床半島の火山は、日本列島でみられる典型的なマグマ(カルクアルカリ・マグマと呼ばれています)の活動でできています。しかし、根室半島のマグマは、アルカリ玄武岩と呼ばれているものです。少々変わったマグマです。海洋の真ん中にある海山や海洋島を形成するマグマに見られるタイプです。それが、陸の堆積物がたくさん流れ込んでくるような場で、活動しているのです。
 古い時代の地層とマグマからできた火成岩が、根室半島から千島四島まで延びる火山列をつくったのです。そんな過去の列島が、現在も残されているのです。
 根室半島を構成しているアルカリ玄武岩という不思議なマグマの成因は、まだ完全には解明されていません。このようなアルカリ玄武岩マグマの活動は、根室半島より先の歯舞諸島にも連続しています。マグマの活動には、もちろん国境などないのです。

・納沙布岬・
私は7年ほど前の秋にも納沙布岬を訪れました。
そのときも寒く霧が出ていました。
いずれも冷たく、暗い天気だったので、
どうしても納沙布岬は暗い印象が残っています。
天気いい日に行けば、印象は違ったのでしょうが、
根室半島は冷たく、霧のかかったところの印象が強かったです。
層状分化岩体とじっくり見たかったのですが、
天気に恵まれず、海岸も一箇所しか降りれなくって、
十分な調査ができませんでした。
また別の機会としましょうか。

・紅葉・
北海道は、日本ハムファイターズのリーグ優勝に沸いています。
野球の話題で盛り上がっています。
我が家では、次男が野球のルールも分からないのに、
ファイターズの応援をしています。
でも、熱いのは北海道の野球周辺だけで、
北海道はここ数日で一気に寒くなってきました。
冬の訪れを感じさせる日ですが、
我が家も朝夕は暖房も炊くようになりました。
コートも着て、手袋もつけました。
ただ心残りは、北海道らしい紅葉をまだ見てないことです。
紅葉越しに見る突き抜けた青空は格別です。
できれば、雪が降る前に紅葉を見ておきたいものです。