2007年6月15日金曜日

30 恵山:せめぎあいの恵み(2007.06.15)

 自然の中にはいろいろなせめぎあいがあります。火山と植物もせめぎあっています。火山が噴火すれば、植物は死滅します。しかし噴火がおさまれば、また植物が回復します。火山とはそんなせめぎあいの繰り返しがおきています。

 今年2007年のゴールデンウィークは、4月下旬と5月上旬の2つの連休に分かれていました。私は、家族同伴で、後半の連休の3日間を利用して、恵山に出かけました。
 恵山は、北海道の南部(道南)、渡島半島の東部にあたる亀田半島の東端にあります。私の住む江別市から恵山までは、350kmほどあり、高速道路を利用しても、5、6時間かかるところです。目的地に行くまでに1日仕事となります。連休の初日は天気もよく、高速道路の出口の料金所が渋滞していました。私は、今までゴールデンウィークによく出かけていましたが、北海道の郊外で、渋滞にあったのは、これがはじめての経験でした。
 恵山は、活火山で、618mの標高を持ちます。中腹まで道路があり、登山自体は、半日ですんでしまいます。今回出かけたのは、私は恵山の調査だけが目的でした。かなり遠いので、自宅から恵山まで1日かけて行き、1泊して、翌日の午前中に登山をします。午後は周辺を観光します。そしてもう1泊して、またまた1日かけて帰宅するというものです。
 恵山では、ツツジが名物となっています。エゾヤマツツジとサラサドウダンツツジ、エゾイソツツジなど、60万本ものツツジがあるとされています。それらが満開となる5月下旬から6月いにかけては、多くの観光客が集まります。しかし、ゴールデンウィークでは、まだツツジには早い時期なので、比較的すいていました。ですから、4月に突然思い立った調査なのですが、温泉旅館がとれました。
 私が、恵山に行こうと思ったのは、道南の活火山をみるためです。本当は駒ヶ岳に行きたかったのですが、駒ケ岳は噴火の危険性があるので、現在は登山禁止となっています。ですから、恵山に登ることにしたのでした。
 恵山は、現在も噴気を出している活発な火山で、こんもりとした山容(溶岩ドーム)をしています。このドームの西側は、大きくえぐられた形になっています。これは、もともとドーム状であったものが、2500年前の噴火で壊されたもので、その裾野は広く平坦に(火口原とよばれています)なっています。この火口原から火山の裾野にかけて、ツツジなどの植物が多数自生しています。
 恵山の噴火の歴史をみていくと、安山岩マグマによる活動で、同じ活動を繰り返してきました。最初に火砕流をもとなう爆発的な噴火を起こし、その後溶岩ドームを形成するような激しい噴火を起こします。そして、ドームの崩壊を起こすような小噴火に変わっていき、穏やかな静穏期へと移っていきます。これがひとつの噴火サイクルとなっています。
 溶岩ドームを形成するような激しい火山活動は、3~4万年前、2万年前、8000年前の3回が確認されています。その間、数千年から1、2万年ほどの静穏期の後、再度活動にはいるということを繰り返しているようです。現在は、8000年前に起こった活動の静穏期にあたると考えられます。しかし、完全に休止したわけではなく、大規模な噴火は減っていますが、5000年前、3000年前、2500年前、600年前、そして1846年と1874年に小規模な噴火が記録に残っています。
 1846年の噴火では、溶岩ドームで水蒸気爆発を起こして、小さな火口が形成されました。この噴火で、火山による泥流が発生して、数十名の犠牲者がでたという記録が残されています。
 恵山の海側は、ドームが海上に切り立ったようになっているため、急峻な地形となっています。海を巡る道路もありません。ドームの周辺には、集落が近接しています。もし噴火があれば、大きな被害を出す可能性があります。
 しかし、そんな恵山周辺には、火山のおかげでいくつかの温泉があります。それぞれ泉質も趣きも違っているため、観光資源として利用されています。危険と観光のせめぎあいのなかで、人々は暮らしています。
 恵山の火口原の標高300mあたりまで舗装された道路があり、火口原が行き止まりですが、駐車場が完備されています。そこから火口原の散策コースや登山コースが始まります。私の家族は、登山コースがたどり頂上を目指しました。険しいのぼりが続きますが、眺望が開けた景色、小さな噴気口、ドームの断面を眺める展望台、ドームをつくっている火山岩などを見ることができ、いろいろ楽しみながら、登ることができます。
 子供たちは、頂上に行ったら、津軽海峡越しに、本州の青森が見たいといっていました。登山をした日は天気はよかったのですが、霞がかかっていて、空気が澄んでいませんでした。そのため、残念ながら、青森の下北半島は見ることができませんでした。
 登山道の各所に、安山岩の溶岩がみることができました。その溶岩には、ガスが抜けた跡の穴が、マグマが流れた方向に長く伸びた流理模様を見ることができます。マグマの動きを物語る生々しさがありました。
 登っている途中には、小さな噴気孔がいたるところにありました。現在も噴気を出しているところ、昔出していたが今は出していないところ、そこには黄色いイオウの結晶やその他の沈殿物の結晶などが形成されていました。また風向きが変わると、噴気のガスが流れてきて、イオウのにおいもしてきました。蒸気につつまれ熱さを感じることもありました。やはり、ここは活火山なのです。
 恵山は低い山なので、頂上付近にも植生がありました。私が登った時は、まだ時期が早く、花は咲いていませんでしたが、花の季節なれば、さぞかしきれいだろうなと思いました。
 しかし、山の全面が植生に覆われているわけではありません。静穏期に入っているとはいえ、火山の影響がいたるところに、色濃く残っています。噴煙がまだ出ているところや、崩落が続いているところ、土砂が流れているところでは、まだ火山の勢力が残っています。
 恵山の最後の噴火は、1874年です。ですから、もう130年以上たちます。その間に、植生は回復しました。恵山は、北海道でも、道南に位置し、比較的穏やかな地域です。標高も高くないため、植生の回復には適していたのでしょう。130年前と同じかどうかはわかりませんが、今では植物がせめぎあいに勝っています。そして今では、ツツジの名所として、観光客を集めています。火山にはつきものの温泉も、麓にはいくつもあり、観光に一役買っています。
 私たちが登った日は、晴れの暖かい日でした。しかし、風が強く、頂上でも岩陰に入らないと、体感温度が結構低くなっていました。ですから、あまり長居はできませんでした。風に背を圧されるように山頂を後しました。
 登山をしている間、植生と火山のせめぎあいを、恵山では見ることができます。今は火山の活動も静穏期になっているので、火山と植物のせめぎあいも「恵み」となっている山なのでしょう。

・幻の温泉・
椴法華と書いて「とどほっけ」と読みます。
市町村合併以前は亀田郡椴法華村でしたが
現在では函館市椴法華となります。
恵山の北側の椴法華に水無海浜温泉があります。
海岸に湧いている温泉で、
コンクリートで枠が作られて、浴槽らしくなっています。
しかも、無料の温泉で自由に入れます。
私が行った時は、潮が引きはじめている時でした。
温泉に入ることできました。
私は、ただ見学していただけでしたが、
子供たちがは、足だけを温泉に浸かっていました。
私が訪れたときは、ただの海沿いの温泉でしたが、
この水無海浜温泉は、別名「幻の温泉」と呼ばれています。
それは、この温泉は少々変わっているためです。
満潮の時は、海水が温泉の中まで進入して、冷たくて入ることができません。
干潮で、潮が完全に引くと、今度は、
温泉の温度が50度ほどあるので、
熱くて入ることができません。
ですから、満潮と時は、温泉が消え、
干潮には熱くて入れないという温泉です。
入る時間が限られている「幻の温泉」なのです。

・はしか・
隣の大学ではしかの学生3名がでて、
14日から24日まで、キャンパスへの立ち入りは全面禁止となりました。
その間の大学祭は延期、
オープンキャンパスは中止となりました。
大学の教職員は免疫があるので通常通りの勤務するそうです。
もし、10日間の休みともなると、
いろいろなスケジュールも都合がつかないものも出てきます。
もしかすると、もう潜伏期間にはいっている学生がいるかもしれないと
想像すると、我が大学でもいつ感染するか戦々恐々としています。
無事、流行が収まることを祈っています。