2009年2月15日日曜日

50 浅間山:噴火の予知と対処

 浅間山は、現在、活発な火山活動をしています。先日は東京や横浜でも火山灰が降りました。浅間山は、古くから何度も噴火してきました。そこには、悲劇が繰り返し起こっていました。そんな悲劇を二度と繰り返すことのないように、私たちは過去や今回の噴火から学ばなければなりません。

 2月2日夕方、自宅に帰ったとたん、テレビのニュースを見ていた家内が「浅間山が噴火したのを知ってる?」と聞きました。「知らない」といって、ニュースの映像を見ました。噴煙を上げている浅間山が見えた直後に画面が変わり、横浜での降灰の様子が示されました。車のボディーにうっすらと積もった火山灰が放映されていました。
 私は、浅間山が、以前から要注意の活発な火山であることを知っていました。また、昨年の夏の小噴火は知っていたのですが、今回は噴火の兆候があったことは知りませんでした。ですから、浅間山が噴火と聞いたとき、少々驚きました。
 浅間山の噴火は、2月2日の深夜1時51分頃に起こりました。噴火としては小規模でしたが、大きな火山弾が、山頂の火口から、1~1.2kmまで飛び散りました。噴煙は、上空2000mまでも達しました。そのときの風向きが南東方向だったので、浅間山から、埼玉県、東京都、神奈川県の一部に火山灰を降らしました。降灰は、房総半島の鴨川市内でも確認されました。この降灰の様子を2日の夕方のニュースは伝えていたのです。
 浅間山は、2月9日7時46分ころにも小さな噴火が起こり、その後しばらく断続的に噴火をしています。9日の噴火はあまり大きくはなく、周辺地域で降灰が少しあった程度でした。噴気や小規模な噴火は、現在も継続中です。
 浅間山の噴火の兆候は、火山観測網が捉えていました。傾斜計や地震計、GPS、空震計、望遠カメラによる観測によって捕らえた兆候に基づいて、気象庁地震火山部は、2月1日午後1時、「火口から4キロメートルの範囲に影響を及ぼす噴火が切迫していると予想」して、「噴火予報・警報 第1号」を発表しました。
 火口周辺警報として、噴火警戒レベルがそれまでレベル2であったのが、レベル3に変更されました。レベル2とは火口周辺規制、つまり火口周辺への立入の禁止ですが、レベル3になると、入山規制、つまり山への立ち入り禁止と、状況に応じては災害時要援護者(重度の障害者やひとり暮らし高齢者など日常においても支援を必要とする人)の避難準備がおこなわれます。
 また、2月3日には、「噴火予報・警報 第2号」が出されました。噴火したのですが、今後も噴火の危険性があるので、噴火警戒レベル3を継続することが、周辺地域の自治体に通知されました。
 浅間山は、群馬県と長野県の境にある標高2568mの山頂の火口を持つ活火山です。火山のある場所は、地質学的に複雑な位置になります。
 本州を2分するフォッサマグナとよばれる大断層の中ほどで、断層の東側にあたります。フォッサマグナは、ユーラシアプレートと北アメリカプレートの境界になります。また、北から続いている東北の火山フロントと、南の伊豆マリアの火山フロントがぶつかり、そして屈曲しているところになります。浅間山がある地帯は、南南西から北北東にのびる40kmx30kmにおよぶ低地帯があり、この低地はプレートの運動による構造的な窪地となっています。浅間山は、プレート境界で屈曲する火山帯という複雑な地質になっている場所なのです。
 浅間山は、数10万年前から火山活動が活発に起こっています。浅間山は日本でも火山活動は、現在の残されている3つの火山に代表される3つの時期に分けられています。古いほうから黒斑(くろふ)火山による黒斑期、仏岩(ほとけいわ)火山の仏岩期、そして前掛(まえかけ)山の前掛期です。
 東に開いた馬蹄形カルデラを持つ黒斑火山は、9万年前には活動を開始したと考えられています。標高2800mにも達した成層火山でしたが、2万3000年前ころに大規模な山体崩壊が起こります。この崩壊によって岩屑なだれが起こりました。その痕跡は泥流としてとして、周辺の流山地形や前橋台地などに残されています。黒斑期の活動は、2万1000年前ころには終了します。
 仏岩火山は、現在の火山である前掛山の東側に隠れてはっきりとしません。しかし、その活動は周辺の地質調査から解明されています。仏岩火山は、黒斑火山の活動後の2万1000年から1万1000年前まで活動をしました。何度も噴火を繰り返しながら、1万3000年前に大噴火が起こります。この噴火は大規模なもので、長野県と群馬県の火山周辺500平方kmを、火山灰が平均10~30m、最大で50mの厚さで覆ったと考えられます。また南東の軽井沢にある離山は、仏岩期の初期活動で、デイサイトから流紋岩のマグマが火山ドームを形成したものです。仏岩火山の活動も、1万1000年前ころには終わります。
 仏山火山と同じ場所で1万年前ころから前掛火山が活動をはじめ、現在も継続しています。大規模な噴火活動をしたは、8000年前、5000年前、685年(天武天皇14年:飛鳥時代)、1108年(嘉承3年、天仁元年:平安時代)、1783年(天明3年8月5日)が知られています。685年以降の活動は、人が記録を残している時代のものです。小規模な活動も活発で、何度も噴火を繰り返して、今回の噴火に至っています。日本でももっとも活動的な火山の一つです。
 浅間山には、だいぶ以前になりますが、2001年9月にいったことがあります。そのときは、浅間山周辺をめぐり、鬼押し出し公園や浅間火山博物館、嬬恋郷土資料館など浅間の噴火に関わる場所をめぐりました。
 天明の大噴火は、溶岩が流れ(現在の鬼押し出しの溶岩)と火砕流(浅間焼泥押)があり、1500人もの死者が出ました。そのときの様子は、嬬恋(つまごい)郷土資料館や鬼押出し園にある浅間火山博物館で紹介されています。
 嬬恋郷土資料館のすぐ隣に鎌原(かんばら)観音堂があります。観音堂までは、15段の石段を登っていきます。しかし、この石段はもともとはもっと長いものだとされていました。下にあったはずの石段は、天明の大噴火による火砕流と岩屑なだれが埋もれてしまいました。
 天明の大噴火は5月8日に始まりました。しばらく休止した後、6月25日に噴火し、また小康状態になりました。そして、7月17日に大きな噴火があり、8月4日から5日の未明にかけて最大の噴火が起こります。この噴火によって飛びだした火山灰によって、関東中部でも、昼なのに夜のように暗くなったと記録にあります。5日の午前10時ころ、鎌原火砕流が発生します。火砕流は地面削りながら、岩屑なだれとなり15kmも離れた鎌原村を直撃しました。岩屑なだれは、鎌原村の住民597名のうち、一瞬にして477名の命を飲み込みました。
 昭和54年に埋もれている石段の発掘が行われました。岩屑なだれの厚さは、6mにも達し、35段の石段が埋もれていました。そこから、生き埋めになっていた2名の女性の遺骨も一緒に発掘されました。2名の女性は、老婆を背負った若い女性の遺体でした。そこにどのような物語があったかは、想像するしかありません。老いた母を背負って逃げるつもりの嫁だったのでしょうか。でも、彼女らは、あと数分、いやあと数十秒早く非難していたら、生き延びられたでしょう。
 日本のある地域に限定してみると、火山噴火はそうそう起こるものではないといえます。ですから、多くの日本人にとって、火山は温泉や景観などの恵みを与えてくれるものです。特に、平野にある、一見火山とは無縁にみえる東京や横浜のような大都会の人にとっては、火山は恵みをもたらすものに映るかもしれません。しかし、今回の浅間の噴火のように、平野の真ん中の大都会でも火山灰が降ることもあるのです。
 日本は火山列島なのです。その証拠に、日本の大地をどこを掘っても、必ずといっていいほど火山灰層がでてきます。それは、日本列島が火山列島であることを物語っています。
 自然は、荒々しさを時に人に向けることがあります。ですから、自然現象には謙虚に臨まなければなりません。ただし、自然に恐れおののくだけではいけません。自然にどう立ち向かうべきかを、今回の噴火は教えてくれます。
 現在の科学でも、火山の噴火を止めることはできません。しかし、今回の浅間の噴火のように十分な観測体制を整えれば、ある程度噴火を予知することは可能になってきました。そして、その予知に基づいて、防災のための行動をすれば、多くの命は救われるはずです。そのような知恵を私たちは持てるようになってきました。二度と親孝行の嫁をみすみす亡くすことがないように、心しなければなりません。

・火山見学・
浅間山にいったのは、2001年の9月でした。
そのころ私は、神奈川の博物館に勤務していました。
次男が生まれて1年半ほどたったころに、浅間山にでかけました。
浅間は、2001年の1月から4月にかけて
噴煙をだしていたのですが、
その後は活動が収まっていた時期でした。
新幹線を使えば、かなり気軽にいける距離でした。
そのときは、浅間山だけでなく、
近くにある白根山、榛名山も一緒に見てきました。
もちろん温泉に泊まりながらです。
そのときは、火山の恵みを味わっていました。

・暖冬・
今年の北海道は、雪も少なく、暖かい冬となっています。
ここ数年の雪の多い時期と比べると
除雪もあまりすることもなく、楽な冬を過ごしています。
雪が降ってもあまり多く降ることはなく、
休日には子供たちが除雪をしてくれます。
私が除雪をしたのは、数えるほどしかありません。
排雪場所に困るほどの量もありません。
昨年の夏に、大雪に備えて、屋根に雪庇対策を施しました。
今年は、その効果を確かめることができないようです。