2015年1月15日木曜日

121 11年目への旅立ち:今までのお礼

 今回は、地域の地質の紹介はしません。ご了承下さい。このエッセイをはじめて、丸10年が過ぎました。今回は、区切りのエッセイとします。今までを振り返り、今後を考えていきます。少々長くなりますが、お付き合いください。

【はじめに、お礼を】
 月刊GeoEssay「大地を眺める Land View」のスタートは、2005年の創刊号(No.00号、1月3日発行)、そして1月号として毎月15日に定期発行をはじめました。発刊してから、丸10年が過ぎ、今年から11年目になりました。今回のエッセイで121回目の発行になります。そこで、10年間購読いただいた読者に対して、お礼を申し上げたいと思います。これまでこのメールマガジンおよびサイトを続けてこられたのは、読者の方がおられたからです。読者がおられないのであれば、ホームページで勝手に公開するだけでいいわけです。気楽かもしれませんが、多分定期発行はできていなかったと思います。繰り返しになりますが、購読、本当にありがとうございます。
 10年の節目を迎えたので、今までの経緯を振り返り、発行方針や状況で変わったこと、変わらないことを整理して、今後の考えについて紹介していこうと思っています。

【はじまりは】
 月刊GeoEssayの準備をはじめたのは、2004年の秋からでした。
 当時、私は、北海道地図株式会社(以下、北海道地図と略す)から10mメッシュの数値地図を購入するため、コンタクトをとっていました。北海道、神奈川、愛媛県を共同購入することにしていました。本来は、私たちが用意した予算では購入できない範囲を、こちらの予算で購入することができるように配慮頂きました。その関係で、担当や本社の関係者といろいろと話をする機会もあり、会社の訪問もさせていただきました。
 その時、北海道地図が地形解析図を製作販売していることを知りました。地形解析図をみて感動しました。地形解析とは、数値標高のデータを処理をして、地形の特徴をよりよく見せる手法でした。解析による加工により、画像として示すと、地質を反映した地形が明瞭に見えました。
 地質学者は、野外で地形から地質の特徴を読み取っていましたが、時には経験的に読み取っていたものもありました。一般の人にはわかりにくい特徴をとらえていることもありました。ただし、地質学者も人ですから、人間の目で見える範囲やスケールは限られていました。ところが、コンピュータで数値処理をすると、さまざまなスケールで、地形や地質の特徴を浮彫りにすることができました。
 しかも、地形解析の図をみれば、経験でかろうじてとらえていた特徴を、だれでも簡単に理解できることができるのです。これは大きなメリットでした。この表現手法を利用すれば、地質や地形を、多くの人へ視覚的に説明できるのではないかという思い浮かびました。
 地形解析画像に魅力感じたので、それを利用して共同研究をすることを、北海道地図に提案しました。北海道地図は、私の提案を、快く受けてくださいました。そこで話し合た上で、北海道地図がデータの提供をすること、私が文章の作成、公開までをすることにし、そこでは一切、金銭の授受はしないという前提で行なうことにしました。お互いに、ボランティアでの活動ということにしました。
 やり方は、私が調査で出かけた地域を題材に、科学教育の一環として、科学エッセイを毎月一回、書くことにしました。その科学エッセイを、メールマガジンとして発行して、市民に無料配布、公開して、科学の成果を還元することにしました。メールマガジンは文章のみなので、画像をホームページで示すことにました。私が購入した10mメッシュ数値地図、北海道地図からは地形解析図(商品でした)、購入していない地域は無料提供を受け、それを使用することにしました。
 他にも、購入していた北海道の2,500万分の1地図画像、国土地理院が無料公開していた50mメッシュ、250mメッシュなどの数値地図を用いて、無料ソフトの「Kashmir」を用いて地形図や数値地図を合成して、画像を作成して公開していました。
 私が調査した時に撮影した露頭写真や景観写真なども用いて、エッセイを書くことにました。画像は、すべてホームページで公開して、メールマガジンではテキストだけの発刊としました。そして、私自身、IT技術、GIS技術も学んでいこうという気持ちもがありました。

【これまでのこと】
 2005年1月号からスタートし、今回のエッセイで121回になります。エッセイに関しては、毎月いつもの通り発行していましたが、この10年間でいろいろと状況の変化があり、表には出ないのですが、いくつか変わったこともあります。
 まず、北海道地図との付き合いが、2009年3月で終わったことです。当初、どれくらい継続するかを決めずにスタートしましたが、4年3ヶ月も間、データを無料提供をしていただいたことになります。北海道地図にはこのエッセイ担当の方がおられ、私がメールマガジンの題材にする地域を指定したら、数値標高と地形解析やデータを作成するという手間をかけてくださっていました。あるとき、会社の組織再編があり、そこを区切り、データ提供は中止とすることになりました。しかし、北海道地図は、商品である地形解析図を、日本全国分を無料提供くださいました。非常に大量のデータなので、ハードディスクを2台送り、そこに入れてもたった記憶があります。また、そのデータ処理のためにプログラムを作成し、何日もコンピュータを動かしっぱなしにして計算した記憶があります。その結果、私がこのサイトで地形解析データを利用することができています。
 無料で利用できるデータを、いろいろと加えていきました。まず、Landsatの衛星画像が無料で公開されていることを知り、それを利用しています。国土地理院からは10mメッシュの数値地図が無料公開されるようになりました。それまで10mメッシュは北海道地図の重要な商品でしたが、それが終わったことになります。また、5mメッシュの数値地図も段階的に無料公開されています。
 エッセイでも紹介しましたが、アメリカNASAのSRTM3(90mメッシュの数値標高)や日米のASTERによるG-DEM(30mメッシュ)も、無料公開されてきました。G-DEMは精度がよく世界を網羅しているので、非常に有用なデータとなります。ただし、G-DEMはダウンロードの量が膨大になり大変ですので、日本周辺しかダウンロードしていません。
 時代の進歩とともに、公共機関からでデータの公開され、ありがたく利用しました。それを商品としていた北海道地図さんが苦境に立たされたのは、複雑な思いもあります。

【変わらないこと】
 長年発行をしてきたのですが、変わらないこともありました。基本方針として、私が調査した地域を題材にすることでした。日本にこだわっていました。日本の海岸線や代表的河川で試料を採取するという当初の研究目的があったためです。
 次に、IT技術には注目をしていて、常に新しい導入を心がけることでした。連載開始の頃からいろいろと新しい技術に取り組んでいきた、数値地図の利用だけでなく、GPSの利用、パノラマ画像の合成などに取り組んできましたが、これらの一部は、今では当たり前になり、装置もソフトも何度も更新されてきました。今後もこのような更新は続くでしょう。スマートフォーンにはすべて入るようになってきました。しかし、専用機にはまだおよびませんが。

【これからのこと】
 さて、これからのことです。
■GeoEssayはこれからも発行します
 何人かの読者には、エッセイが取り上げた地を、見学に出かけられる人もおられます。そして楽しんで読まれている方もおられます。ですから、毎月、紹介することも、重要なことだと思い、励みにもなっています。ですから、今後も、この月刊エッセイは継続していきたいと考えています。ただし、いくつか方針を変更していこうと考えています。
■万遍なくにこだわらない
 もともとこのエッセイは、私の研究テーマの一つとして、日本の海岸線や河川の調査がありあした。そのため日本全国の海岸を巡るという野外調査をしていて、その時に感想や画像を素材に作成していました。今までのエッセイを見ていただくとわかるのですが、関東、中国などは手薄です。現在でも、日本の海岸線や河川の調査は続けたいと思っているのですが、なかなか出かけられなくなりました。ですから、これからは日本全国の海岸線、河口を万遍なく調査するということはできなくなりました。日本全国万遍なくという希望は継続しながらも、こだわることを止めることにしました。
■地域の重複を気にしない
 子どもが小さいうちは家族旅行であちこちっていたものをネタにしていたのですが、最近では野外調査で出かけられる時間が限られてきました。目的と日程を絞って野外調査をする必要性がでてきました。現在の研究テーマが、九州、四国、南紀を中心にしたものになっています。あと数年は、この地域で調査が継続しそうです。ですから、他地域にでかける機会が、ほとんどなくなりました。ですから、現状に合わせて、同じ地域でも重複を気にすることなく、紹介することにします。
■日本、地球にこだわらない
 発刊当初は、北海道地図との関係(データの提供を受けていた)があったので日本に限定されていました。その関係が現在ではなくなり、日本にこだわる必要もなくなりました。上述したように、全地球の各種の数値標高データが無料公開されています。ただし、私は海外に出かけることは、しばらくできそうにありませんが。以前訪れたところもあります。新情報ではないですが、海外の地質や地形の紹介もしていこうと考えています。行きたいところも色々ありますので、それらを素材にして書くことも考えています。
 さらに、日本だけでなく、海外にテーマを広げ、さらに地球だけでなく、火星や金星など他天体の地形、地質の情報も可能であれば紹介していこうと考えています。ただし、現在扱えるのは、火星と金星のデータだけで、それも古いものです。

 これからのことををまとめると、次のようになります。
・エッセイはこれからも継続発行
・「万遍なく」という制限は考えない
・地域の重複も気にしない
・興味のある地域を、日本、地球にこだわることなく選定

【さいごに】
 このエッセイを続けてきて、思い返すと、いろいろなことがありました。忙しくて書く時間とれず、遅れたこともありました。調査のあとは、書くことがあれこれあり、どこから書こうか迷っていることもありました。
 時間があり、地域さえ決まれば、書くことは私は苦はなりません。ただし、今までの「しかたり」めいたものがあり、それに続縛されてネタを探すのに苦労したことが、たびたびありました。
 今回の方針変更で、地域選定の負担は減りました。また、行きたい地域、行ったこともない地域、同じ地域も素材にできるようになりました。これは、私にとっては、非常に気が楽になり、地域選定も楽しくなり、書きやすくなりました。これからも、問題が起きない限り、継続して発行していこうと思っています。
 最後に繰り返しになりますが、購読者の方々、今まで本当にありがとうございました。これからも、よろしければお付き合いください。ただし、興味がなくなれば、いつでも購読の解除をしてくださって結構です。お互い、気軽に楽しんでいきましょう。

・No. 00・
スタートした時の番号をNo. 00号としたのは、
なぜ二桁にしたのか記憶は定かではありません。
年限を決めていなかったのですが、
数年で終わるつもりで
100号までいくとは予想していなかったのでしょう。
いろいろ事情は変わってきたのですが、
その都度、それなりの理由で継続することにしました。
その結果、10年の長きに渡り、継続することになりました。
今後は、少々発行方針を変えることにしましたが、
淡々と継続していきたいと思いっています。

・しきたりを捨てる・
今回、10年目を迎えるに当たり、
地域によっては、ホームページの地図が混在してきたので、
すべてを地域別に表現することにしました。
すると、関東や中国地域など、
エッセイに取り上げている地域が少ないことに気づきました。
それをどう埋めようか考えたのですが、
行く時間がなかなかとれそうにもありません。
それで、このエッセイの「そもそも」を考えていたら、
どうも、根拠の消えた「しきたり」に縛られている気がしました。
しかし、メールマガジンですから、
ある目的をもって読まれている方もおられるので、
無断で「しきたり」を変えるのは良くないと思い、
今回の10年目の区切りのエッセイを書いて、
方針を少々変更することにしました。
次回をどこにするか、今から楽しみなってきました。
もちろん、まだ未定ですが。