2016年1月15日金曜日

133 阿蘇山:今も活動中

 阿蘇山は、火山とその雄大なカルデラの中で、古くから、そして多くの人が暮らしてきたところです。火山は、恵みだけでなく、災ももたらします。しかし、昔も今も、火山と共存を果たしてきたところです。

 今年のエッセイは、阿蘇山からスタートです。
 昨年の9月に阿蘇山を訪れました。阿蘇山へは、何度か訪れているのですが、興味があれば、同じところへも何度もいきます。今回は、外輪剤の南からは入り、カルデラ内と中央火口丘周辺を巡りました。その後、北の外輪山に登り、外輪山の北側の縁を巡りました。北の外輪山に来るのは、今回が初めてのことでした。
 阿蘇山は、九州中央部にある巨大な火山です。全国的にも、世界的にも有名な火山です。その規模は、カルデラが南北25km、東西18kmになり、カルデラの外側には外輪山があり、そのさらに外側に裾野が広がります。また、カルデラの中には、大きな集落がいくつもあり、5万人の人が暮らし、湧水地や温泉、耕作地や牧草地など広がり、JR豊肥線や南阿蘇鉄道高森線、国道も走っています。多くの人の生活の場であるとともに、観光地ともなっています。
 さて、ここまで何気なくつかってきた「カルデラ」や「外輪山」という用語は、多くの人が聞き慣れているはずです。その意味するところは、ご存知だとと思います。蛇足になるかもしれませんが、少し説明しておきましょう。
 カルデラ(caldera)は、大きな火山の中央部にみられる窪地で、円形にくぼんでいることが多いのですが、いびつになっていることもあります。くぼみの縁は切り立った崖になっていることが多く、それが外輪山となります。カルデラができれば、その周囲には外輪山ができるというメカニズになります。カルデラは火山の火口とは違っていますが、なからずしも厳密ではありません。それはカルデラの成因には、いろいろなものがあることが、わかってきたためです。
 では、カルデラはなぜできるでしょう。かつては、大きな成層火山が激しい噴火をして、マグマが抜けた空洞部分が陥没してカルデラができたと考えられていました。地下でマグマが抜けたところが陥没したものがカルデラでした。必然的に大規模なものになります。箱根カルデラがその典型で、巨大な成層火山があり、それが噴火で吹き飛び、陥没してカルデラができたとされています。
 しかし、成層火山ができることなくカルデラができるものあることがわかってきました。その典型が阿蘇山となります。阿蘇山の外輪山は、阿蘇カルデラを形成した噴火の噴出物からなります。このことから、カルデラができる前に大きな成層火山があったのではないことになります。この成因のカルデラは、巨大火口ということもできます。いずれにしても巨大なカルデラができるには、大量のマグマとそれに由来する噴出物を放出することになります。
 阿蘇山は、非常に噴火の歴史の長い火山です。古い活動では、600万年前から噴火があったと考えられています。しかし、本格的な活動は、85万年前ころからはじまります。この活動は、後の火山噴出物によって覆われており、一部でしかみることができません。このあとに起こる激しい活動でカルデラができるため、カルデラをつくる前の先カルデラ期の活動を、先阿蘇火山群と呼んでいます。
 その後、カルデラ形成期の激しい噴火がはじまりました。その噴火は火砕流をともなう巨大な噴火で、27万年前、14万年前、13万年前、そして9万年前と断続的に4回の活動をしました。なかでも、4回目の活動は、非常に大規模なもので、一桁多いマグマの噴出量があったと見積もられています。また、火砕流は九州中央部を覆うだけでなく、海を越えて愛媛県や山口県の秋吉台にまで達しました。また火山灰は、日本海を越えて朝鮮半島からウラジオストク、北海道も大半を覆うほどでした。北海道の南でも15cm以上の火山灰の堆積があったことがわかっています。この4回の噴火活動で、現在の巨大なカルデラが形成されました。
 カルデラを形成するような活動は終わり、8万年前以降は、中央火口丘のいくつかの火山を形成する活動になりました。主には、8万年前、5万年前、3~1万5000年前、それ以降の活動、に区分されています。
 中央火口丘は、6世紀から現在まで、活発に活動しています。中央火口丘の中でも、中岳が有史以来活発で、玄武岩質安山岩のマグマが活動しています。中岳は南北に連なるいくつかの火口が複合した火口があります。以前訪れた時は、阿蘇山ロープウェイや自動車道で、中岳の第一火口の付近まで登ることができました。火山活動が穏やかなときは、火口には水がたまり、緑色の「湯だまり」(火口湖)ができていました。
 第一火口は2014年11月以降活発になり、しばらく活動が継続すると考えられていました。私が訪れた時も、立ち入り禁止でロープウェイも止まっていて、自動車道も侵入禁止になっていました。
 2015年9月14日9時43分の噴火は、記憶に新しいのではないでしょうか。中岳(第一火口)で噴火が始まりました。私が阿蘇山から帰って直後の噴火でした。訪れている時も、噴気が結構激しく出ていたのですが、特別話題になることはなかったので、通常の噴気活動だったのでしょう。
 9月14日の噴火は、2000m上空まで立ち上る噴煙と噴石が放出するようなものでした。10月23日から14日にかけても小規模な噴火がありましたが、それ以降は穏やかになってきました。噴気の量も10月下旬には減少してきました。
 昨年秋の調査では、北の外輪山から中央火口丘群を眺めたのですが、非常に雄大な景色でした。阿蘇山は、人の暮らしが火山に非常に近いところで営まれているところです。それは、火山の恵みと災と密接に暮らしてきた人たちがいることを示しています。そんな阿蘇の大地と人の生活がテーマとなり、2009年10月に「阿蘇ジオパーク」として日本ジオパークに、2014年9月には世界ジオパークにも登録さました。

・人の営み・
北海道は、雪が少ないと思っていたら、
ここ数日冷え込みが続き、そのあと大雪となりました。
今年は、暖冬とされていますが、
やはり北海道は北国です。
冬型になり季節風が強まれば、
それなりの大雪は降ります。
これは、自然の節理です。
私たち、北国の人間は、そんなところに暮らしているのです。
暮らしと気候は不可分の関係となり
そこに暮らす人の営みを左右します。

・入試・
大学は、後期の授業もあと一週ほどで終わりです。
その後は定期試験があり、2月には入試がスタートします。
今週末はセンター試験が行われます。
我が大学も会場になっています。
教員は、講義が終わってほっとする間もなく
入試でバタバタします。
年中行事でもあるのですが、
何度経験しても、入試は神経を使いますね。