2016年11月15日火曜日

143 豊富温泉:効能と好悪と

 温泉に入るのは楽しいものです。一時、日頃の憂さを忘れて、のびのびできるのが、温泉の一番の効用ではないでしょうか。人によっては、特徴のある温泉が好む人もいます。そのような温泉に豊富温泉があります。

 どこかに一泊で出かけるときには、できれば温泉があるところに泊まりたいものです。本州だけでなく、北海道は温泉が多い地域であります。目的地の市町村内に温泉があったり、なくても探して近隣の温泉を見つけて宿泊したくなります。泊まったところの温泉が、変わった泉質であれば、好奇心もあり、すぐに入ってみたくなります。でも、個性のある泉質の場合は、自分に合う合わないがあるのです。通りすがりの旅人にすれば、温泉の好悪も、一興ではないでしょうか。
 さて、話しは変わります。先日の日曜日(2016年11月6日)、北海道は強烈な寒波に襲われ、各地で激しい吹雪を伴う積雪がありました。この時期に積雪することがあるのですが、吹雪くこと、そして積雪量もかなりで、除雪車がでるようなことはめったありません。そんな珍しい荒天でした。こんな日は自宅でじっとしているのが一番です。
 こんな日でも仕事の関係で、移動しなければならない人もいます。ご苦労なことだと思います。まさか自分が、そんな日に移動しなければならなくとは思いませんでした。高速道路を用いて、長距離、それも荒天の予想される海岸沿いを進む必要ありました。事故やトラブルがあると困るので、出張は中止にしようかと思いましたが、相手があることで、日曜日なので相手に連絡もできない状況でした。
 出かけるしかなく、覚悟を決めて、余裕をもって2時間ほど早目に自宅を出ることにしました。もしトラブルがあっても対応できるに備えました。目的地は、雪のない時に比べて1時間遅くなりましたが、幸いなことに予定より1時間早く3時過ぎにつくことができました。あとでニュースをみると、札幌近郊や峠越えの高速道路などは、あちこちが通行止があったようです。宿泊予定に着くことができ、翌日の用務は、無事、終えることができました。
 実は、秋のはじまる9月中頃にも、別の校用で、同じところに出張に来ていました。そして今回は、9月から2ヶ月後に再訪となりました。9月も11月も短い用務なのですが、遠いところなので、前泊することになります。9月に滞在した時には、町内にある温泉地に宿泊しました。
 その目的地は豊富町でした。道北の稚内市のすぐ南側にある街です。豊富は小さいですが、日本海側に広がるサロベツ原野が広かっていることで有名な町です。しかし、今回はサロベツ原野の話題ではありません。温泉の話しとなります。
 9月に豊富にいったときに宿泊したのが、豊富温泉でした。最北の温泉郷と謳っていますが、稚内温泉や利尻島にもいくつか温泉が見つかって最北ではありません。しかし、泉源や温泉施設がいくつか集まっているようなところとして温泉郷と呼べるのは豊富温泉が最北なのかもしれません。まあ、定義はさておき、豊富温泉が、有名なのはその泉質によります。
 私の到着してすぐに入りました。実は豊富温泉のことを詳しく知らずに、普通の温泉だと思って入浴しました。風呂場にはいるとすぐに、強烈な石油の匂いがすることに気づきました。豊富温泉は、温泉には石油の成分を含んでいることで有名です。
 豊富温泉は、1926(大正15)年、石油探査のためにボーリングしているとき、960mまで掘削したところ、高圧の天然ガスと共に43℃のお湯が噴き出しました。これが温泉の発見となりました。その温泉を、小屋をたてて地元の人が利用していました。1930(昭和5)年には、温泉旅館の営業がはじまりました。これが、豊富温泉のはじりだそうです。
 その後、温泉だけでなく、天然ガスも利用されてきました。天然ガスによる発電が行われ、広く供給され利用されていて、現在でも温泉地域で使われているそうです。ただ、設備の老朽化が進んでいるそうです。調べたところ、肝心の石油は、温泉以外には利用されていないようです。
 私が宿泊しているとき、温泉内であった人と話をしていたら、その人は旭川から毎月で湯治に来るとおしゃっていました。その人の奥さんがアトピーで、1、2年かよって、だいぶ良くなってきたそうです。
 豊富な油分が保湿や保温の効果に優れているそうで、皮膚病やヤケドに古くから効果があるとされているそうです。全国から湯治に来られる方がいるそうです。効果の実体験は、いろいろ報告されているのようですが、温泉の効能は医学的に実証されているものは、それほど多くありません。万人に効くとは限らないので、自分の責任で対応する必要があります。
 人によっては、症状が悪化することあるかもしれません。また、豊富温泉の一番の特徴である、石油の匂いや油分が苦手な人います。豊富温泉のように個性の強い温泉は、好悪がはっきりと分かれる温泉といえそうです。匂いが苦手な人とは、実は私なのですが、これは好みの問題ですので、致し方ありません。
 でも、温泉の一番の効能は、温泉に浸かったときにでる、ホッというため息に現れているのではないでしょうか。とくに露天風呂などで雪を見ながら、温泉に浸かっているときの、開放感と暖かさは、体も心も癒やされます。これが、一番の効能と思えます。それに加えて、美味しい食事と一杯のお酒は、薬ともなりそうですが、これは私だけでしょうかね。

・サロベツ原野・
豊富の一番の観光は、何といってもサロベツ原野です。
サロベツ原野の話題は、以前にも
このエッセイで取り上げたことがあります。
「GeoEssay 24 サロベツ原野:時間以上になくしたもの」
として紹介しました。
もし興味をお持ちでしたら、ご一読いただければと思います。
http://terra.sgu.ac.jp/geo_essay/2006/24.html
9月は、豊富に前泊でしたので、早目に到着して、
サロベツ原野や丘陵地帯の大農場を見て周りました。
平日でもあったので、観光地だというのに人気の少ない状態でした。
そんな湿原や酪農地帯は、少々侘しさを感じました。
多分、これは曇った天気のせいもあったのでしょうね。

・温泉の油分・
温泉から上がってから、旅館の女将さんと、
温泉についていろいろと話をしました。
石油の油分についても話を聞きました。
以前は油分を流さずにでると、
シャツが茶色く染まるほど油分が豊富だったそうです。
今でも、匂いや油分はあるのですが、
その量はだいぶ減ったそうです。
温泉上がりに、体についていた油分が
ずっと残っているようで、この匂いがダメでした。
ですから、次回の宿泊地は、別の町の温泉に泊まりました。
そこは油分はなかったのですが、石油臭がすることろでした。
やはりその匂いがダメでした。
どうも石油の匂いは、私には合わないようです。