暑い夏ですが、北海道はもう盛りを過ぎたようで、爽快な気候になってきました。観光客も、夏には涼しい高原や北国を目指すのではないでしょうか。しかし、今回は沖縄の話題です。
私は沖縄には、2度、訪れたことがあります。一度目はずいぶん前ですが3月末に学会発表のためで、二度目は2月末から3月はじめにかけて調査のためでした。いずれも春のシーズンでした。いずれも北海道に住んでいる時のことでしたので、季節が一気に冬から夏へ突然変わったきがしました。北国から来た者にとっては、沖縄は楽園に来たような気がしたものでした。しかし、帰ってくると、春まだ遠い北国の寒さが一層こたえました。
このような気候変化を見ていると、日本が南北に伸びる長い列島であることが体感できます。これは日本が南北に長いため、風土が多様になっているのでしょう。
沖縄は、日本という国の一部です。しかし、北海道や本州と比べると、沖縄は明らかに小さな島です。南西諸島としてみると、いくつもの島が連なっていますが、大きな面積を持つ陸地ではありません。ところが、大地のようすを見ていくと、日本列島の持つ特徴と同じであることがわかります。日本列島の地質と沖縄(南西諸島)の地質と共通性をみていきましょう。
まずは、日本列島の特徴をみていきましょう。日本列島をよくみると、いくつかの弧状の陸や島を連ねた形をしています。そのひとつひとつの弧の中身は、日本列島の大地の形成を物語っています。
日本列島の代表として、本州を見ていきましょう。本州は大きな2つの弧がくっついています。その接合部は本州の中央部、長野県のあたりになります。長野県内には南北に延びる大断層があります。この大断層はフォッサマグナと呼ばれるもので、北は日本海にから、南は静岡県を通り抜け太平洋に達します。地質学ではフォッサマグナより北東側を東北日本、南西側を南西日本と呼びます。
西南日本で日本の代表的な大地のつくりをみていきましょう。西南日本は典型的な列島形成のメカニズムでつく上げられています。そのメカニズムとは、海洋プレートが海溝で陸側のプレートの下に沈み込むときにできるものです。海溝とは海洋プレートと大陸プレートが出会い、消滅する地質学的には非常に「活発な場所」であり、「多様な岩石」が集まり形成される場所であります。そのような作用が、何度か起こって、西南日本の大地が形成されてきたのです。
「活発な活動」とは、海洋プレートの沈み込みによって起こる「地震」や「火山活動」のことです。いすれも、沈み込むプレートによって起こる現象でますから、陸側の地下深部で起こります。
沈み込むプレートは、年間10数cmで移動する硬い岩石の板のようなものです。硬い岩石が沈む込むときに、その境に強い力が加わります。やがて周囲の岩石やプレートの岩石はこらえ切れなくなって壊れてしまいます。それが地震となります。
地震は、規模(マグニチュード)が大きくても、深いところで起こったのであれば、地表の揺れ(震度)は小さく、被害が少なくなります。しかし、浅いところでこる地震は、規模が小さくても、地表での揺れは大きく、被害も大きくなります。北海道の釧路から十勝や東北、関東、東海、南海などの太平洋側では大きな地震が起こり、大きな被害を与えます。
海洋プレートの押す力は、地表へも力を加えます。そのような力に地表付近の岩石が耐え切れないと、断層としてあわられます。地表近くの大きな断層による地震は規模が小さくても大きな被害を与えます。兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)、新潟中越地震は活断層による地震です。
沈み込む海洋プレートは、海の底にあったので、水をたくさん含んでいます。海洋プレートが沈み込む時、水はしぼり出されます。しぼり出された水分は、軽いので地表に上がっていこうとします。沈み込むプレートは列島の地下深くまで沈み込みます。深いところでしぼり出された水分は、列島の地下のマントルに入り込みます。暖かいマントルに水分が入ってくると、それまで固体であったマントルが溶け始めます。これがマグマとなります。マグマが地表で活動したら火山となります。列島の火山はこのような仕組みでできます。
「多様な岩石」とは、海で形成された岩石と陸で形成された岩石の両方があります。海からは、海洋プレート自身の岩石(玄武岩や斑レイ岩、かんらん岩)や、海洋プレートの上の深海底にたまった堆積物(チャートと呼ばれる岩石)、海底火山や海洋島の火山活動によってできた岩石(海洋底のものとは少し違った性質の玄武岩)や、それらの島の周辺にできたサンゴ礁などの岩石(石灰岩)が集まります。一方、陸からは、列島をつくっていた岩石が河川によって堆積物として大陸棚に運ばれてきます。時には列島の火山から火山灰などが飛んできて堆積します。
海と陸の岩石が、海溝の陸側の地下で混じって付け加わっていきます。海と陸の岩石が海溝に沿って次々と付け加わっていきます。このような特徴を持つ岩石でできた地質体を付加体と呼んでいます。付加体が、沈み込み帯で形成される特徴的な地質となります。
付加体を貫くようにしてマグマの活動が起こります。そのようなマグマの活動の記録は、マグマが地下で固まった深成岩や、マグマが地表に噴出した火山岩からみることができます。
深成岩は、付加体の深部で固まったものです。ですから、現在の地表で見ることができるようになるには、隆起して、上を覆っていた岩石や地層が侵食によって削剥されなければなりません。列島では深成岩が地表に出て見ることができるので、隆起し、侵食の激しいところとなります。
古い沈み込み帯には、結果として、付加体と多数の断層や火山が残されていきます。このような古い付加体が西南日本にいくつかあります。付加体を構成する岩石や地層を広域で見ると、大きな時代区分の違いがあり、大断層(構造線と呼ばれています)で境されています。そのような時代や構造の境界を利用して、日本列島の地質構造を区分しています。有名な中央構造線も付加体の境界と位置づけられます。
日本列島では、中央構造線を境にして、太平洋側を外帯、日本海側を内帯とよんでいます。外帯の中でも重要な境界として、仏像(ぶつぞう)構造線というものがあります。仏像構造線とは、内帯側に傾斜した大きな逆断層で、中央構造線側に古生代後期から中生代中期の付加体(三波川変成帯と秩父帯とよばれる2つの帯があります)があり、海側に中生代後期より新しい付加体(四万十帯とよばれます)があります。
さて、沖縄の話です。本州、四国、九州から連続した構造をもった地質が、沖縄にもあります。沖縄を含む南西諸島では、太平洋側(正確にはフィリピン海)には、沈み込み帯である琉球海溝があります。その内帯側(西側)には、列島があり、縁海にあたる東シナ海(正確には沖縄トラフといます)という構造をもっています。
また、南西諸島は、3つの構造帯が列をなしています。東シナ海側、つまりいちばん内帯側に、新しい火山島列があります。硫黄島、口永良部島、中之島、諏訪之瀬島、硫黄鳥島などで、現在も活動中の火山がたくさんあります。
列島の中央は、古い時代の付加体で、奄美大島、沖縄島北部などと、南西諸島の一番南にあたる石垣島、西表島、与那国島も、古い時代の付加体です。ペルム紀とみられる化石が見つかっていますが、多くはジュラ紀から白亜紀にかけての付加体です。本州でいう三波川変成帯と秩父帯に相当するものです。
最後に、太平洋側、つまり一番外帯側には、白亜紀から第三紀の堆積岩からなる付加体があり、種子島や隆起サンゴ礁の沖永良部島や宮古島など低平な島が多い。本州でいう四万十帯に相当するものです。
深成岩の活動も見られます。深成岩は主に花崗岩で、すべて第三紀に活動したものです。北から、屋久島、奄美大島、徳之島、沖永良部島、渡名喜島、沖縄島、石垣島などで、規模はさまざまですがみられます。
このように見ていくと、南西諸島は、狭い範囲に日本列島の内帯を除く地質の要素と同じようなものが、出ていることになります。沖縄周辺も地質学的は日本列島と同じような構造を持っているのです。
・弧状列島・
なぜ、弧状の地形ができのでしょうか。
不思議に思うことがあります。
しかし、これは、地球が平面ではなく立体であること
それも球体であることが重要な意味があります。
海洋プレートと大陸プレートがぶつかり、
海洋プレートが沈み込むときの形態です。
これは硬い球体に、押し込まれたくぼみができるという現象です。
ピンポン玉を押してへこませたときでききる窪みは、小さな弧状のものです。
これが大規模に地球でも起きているのです。
ピンポン玉の窪みの反対側には、弧状の高まりができます。
これが列島の陸側に隆起が生じます。
日本列島は、今も、いくつもの沈み込み帯があります。
過去にもあったことが知られています。
それぞれが弧状の形態となっています。
日本列島は弧状の地形の集まりでもあるのです。
これは日本列島だけの特徴でなく、
多くの沈み込み帯では、ごく普通にみられる地形的形態です。
日本列島のような島が集まっているところを
弧状列島(島弧ともいいます)と呼ぶことがあります。
南西諸島も立派な島弧なのです。