大分南部の四浦半島は、狭く険しい海岸の道が多いのですが、そこには日本列島を代表する付加体と大きな断層があります。付加体には、層状チャートが分布しています。そんな付加体のチャートと断層を紹介します。
1月末に、大分から宮崎にかけて、5日ほど野外調査にでました。大分県南部の四浦(ようら)半島が、最初の目的地でした。ここで見る予定は、層状チャートです。私は、ここ数年、層状チャートを追いかけています。いい露頭、代表的な露頭には、何度も通うことになります。四浦半島も、今回が2度目となります。
網代(あじろ)島とその周辺で層状チャートのきれいな露頭で調査をすることでした。網代島には、きれいな層状チャートの露頭があり、調べる予定に入れていました。他にも、今まで訪れていないところにあるはずの露頭を調べるつもりでした。網代島の近くの江ノ浦と、半島の東北の高浜にあるはずの層状チャートの露頭でした。2つとも期待通り、よい露出で層状チャートを見ることができました。
さらに今回、予想していなかった露頭と出会いがありました。江ノ浦から高浜へ移動している時、道路脇に人工的に削られた大きな崖があり、そこにきれいな層状チャートの地層面がみえました。急遽車を止めて見ました。
その露頭は、明らかに採掘した跡です。削られた崖に、層状チャートが大規模に露出しています。人工的な露頭ですが、非常に見事でにチャートの褶曲が見えています。
調べてみると、ここでは硅石が採掘されていることがわかりました。ただし私がみとところは、採掘は終わっているようで、道路側はコンクリートで被覆されていました。
硅石とは、珪酸(SiO2)の多いもので、純度の高いものが鉱石として採掘されています。珪石の素材となるものには、火成岩起源や堆積岩起源のものあります。堆積岩起源のものは、珪藻土やチャートなどが、その主たるものとなります。四浦半島のものは、もちろん層状チャートが珪石として、掘られていました。
四浦鉱山と呼ばれるもので、現在も、年間35~40万トンほどの硅石を生産しています。四浦鉱山の珪石の用途としては、セメントをつくりときに必要な成分となります。また、珪素鋼をつくる成分として利用されています。鉄鋼に、少量の珪素を混ぜると、磁気の性質(透磁率を上げる)を買えることがきます。珪素は、他にも、吸湿剤としてシリカゲルやガラスや陶芸の原料、珪素(シリコン)として高純度のものは、半導体の原料として使用されます。
Google Earthでみると、四浦半島にはあちこちに人工的に削られた地形が見ることできます。これは、層状チャートを掘った跡のようです。ただし、津久見の町の南西にある巨大な削ったあとは、石灰岩を掘っているところです。石灰岩はセメントの主たる原材料ですから、その堀跡は大規模です。そしてセメントには欠かせない珪石が、近くから産するので、なかなか地の利を活かした鉱物資源となっています。
地質図によると、四浦半島には層状チャートが点々とですが、広域に渡って分布しています。層状チャートや石灰岩の他にも、砕屑性堆積岩や玄武岩類などの種類の違う岩石も見つかります。このような岩石の組み合わせ(岩石群)は、このエッセイでよくでてくる付加体の構成物です。四浦半島は、付加体構成物からできているのです。
四浦半島は、東の豊後水道に突き出た半島です。細長く伸びた半島です。ここには、実は大きな地質の境界があります。半島の南側には四万十帯と属する地質体がくっついています。そこより北側は秩父帯となります。両者とも付加体を構成しているのですが、秩父帯の方が古い時代に付加したものになります。ですから、両者の境界は、時代差だけでなく、地質学的に大きく違った付加体の境界となっています。これは第一級の断層で「仏像構造線」と呼ばれています。半島は仏像構造線に沿って延びていることになります。一方、愛媛県側では、仏像構造線は地形的には険しい崖をつくってはいるですが、あまり海には張り出していません。
それより中央構造線が通る佐多岬が、豊後水道に大きく張り出しています。佐多岬の大分側は、四浦半島の北にある佐賀関の半島にあたります。あまり細長くはないのですが、佐多岬に対応するように出っ張っています。ここが、豊後水道でもっとも狭い部分となっています。ここには、西日本の地質構造を支配するような中央構造線が走っていのです。仏像構造線がつくる地形は、中央構造線ものとは違っているようです。
今回見たのは、秩父帯(南帯、あるいは三宝山帯に区分されています)の層状チャートになります。四浦半島では、秩父帯の層状チャートが、海岸沿いの露頭としてあるので、きれいな状態で見ることができます。なかなかいい地域だということが、今回の調査でよくわかりました。秩父帯の層状チャートを見るときは、たびたび来ることになるかもしれませんね。
・巨大なもののシッポ・
四国の愛媛県で、仏像構造線は見ていましたが、
急な崖となってります。
そこで、かろうじて、仏像構造線の派生断層を
みることもできるます。
あまりきれいな露頭ではありませんでした。
これは、巨大断層の特徴なのです。
地形的にはっきりと現れてはいるのですが、
実際露頭を探すと小さな派生断層しかみえません。
まあ、巨大で得体の知れない存在は、
シッポ程度しか、姿を見せないのでしょう。
・リアス式海岸・
四浦とは、半島の北にかつては四浦があったことから
名付けられたそうです。
大分南部から宮崎の北部にかけて
いたるところに、港に向いていそうな地形があります。
それは、リアス式海岸が広がっているためです。
このリアス式海岸は四国側にもみられるものです。
似た地形が海を挟んであるということは、
大きな大地の変動を意味しています。