この場所をエッセイで取り上げるのは、2度目となります。なかなか興味深いところです。いいところは何度も味わえます。そしてほんの少し足を伸ばせば、柱状節理をいろいろな方向から味わうことができます。
北海道でも6月の大雨で被害が出ていたのですが、7月になっても不順な天候が続き、日本各地に災害をもたらしました。雨が降ったり止んだりの不順な天気でしたが、そんな中事前に予定していたので、道南に4度目の野外調査に出ました。天候が悪かったので、なかなか思うように野外調査は進められませんでした。でも、天候が悪くても、外を動き回り、露頭を見ているといろいろ考えることがでてきます。
今回の調査予定地のひとつに、道南の乙部町がありました。この町には、毎回、通過するルートに当たっている地域になっています。いくつかの地質学的名所もあるのですが、その中に「鮪の岬」という場所があります。「鮪の岬」は「シビのさき」と読みますが、鮪は「マグロ」のことです。ですから、この地名は、マグロにちなんでつけられています。この岬にある崖の形が鮪の背に見えること、あるいは岩のつくりがマグロのウロコに似ていることから、このような名が付いたとされています。鮪の岬は、北海道の天然記念物に指定されています。
天然記念物なっているのは、柱状節理がきれいに見えるためです。柱状節理は、私はいろいろなところで見ています。ここも何度も見ているのですが、本当に見事で見飽きません。鮪の岬の柱状節理は、二層の構造になっています。下段は、海面から整然とした柱が無数に立って海岸の崖になっています。まさしく柱状です。柱は直方体ではなく、5、6角形の断面をしていますが、よくみると、その形にはばらつきがありますが、全体としては似通っており、遠目には整然として見えます。海岸に降りて、近づいて見上げると、大量の柱には圧倒されるような威圧感があります。
上段には、ウロコのようにゴツゴツとした岩石の割れ目が乱雑にある部分が、柱状節理に上に重なっています。上のゴツゴツした部分は、よく見ると5、6角形の断面をもっています。丸くはないのですが、柱の断面が多数あり、車岩と呼ばれています。車岩は、柱状の部分を断面を見ていることになります。下部は上部に比べて、のしかかる庇(ひさし)のように、手前にせり出しています。そのため上から覆いかぶさってくるようになり、威圧感を増す構造になっています。
柱状節理も上の車岩も同じ新第三紀の安山岩からできます。マグマが地層の中に貫入して冷え固まったものです。マグマが冷え固まる時、体積が少し小さくなるので、固化するときに隙間ができ、それが割れ目(節理)となっています。その節理が多数はいることで、柱状になっています。節理は、温度の勾配に対して垂直にできるので、ここのマグマは地層の中に貫入して、上下から冷却されたことになります。現在は、その上半分が露出していると考えられます。
鮪の岬では、整然とした節理と乱雑な断面との組み合わせは妙でもあり、壮観でもあります。道路沿いの整備された公園から見ると、ここまでです。しかし少し足を伸ばせば、この柱状節理が織りなす模様を、いろいろな方向から見ることができます。
国道229号線は、鮪の岬ではトンネルとなり、安山岩の柱状節理の中を通り抜けています。しかし、国道から離れて小さな道を車で登っていくと、安山岩の上の丘に出ます。ちょうと真上にあたるところには、「しびの岬公園」があります。その公園の中の遊歩道を西(岬の先端)に向かって進んでいくと、やがて岬の先端に至ります。そこはごつごつした岩が敷き詰められた海岸になっています。先程の北の海岸では柱状節理を横断面から見ていたのですが、岬の先端では上面から見ることになります。節理の表面は、波の侵食や風化で角がとれて丸くなっていますが、上面がよく観察できます。北側の立った節理を見よう思ったのですが、崖になているため、近づくことはできませんでした。この岬は釣り場になっていようで、何度がいったのですが、常に釣り人がいました。
岬の岩の途中にゆるい傾斜の斜面があり、南の海岸に降りることできます。南の海岸は海食台になっているので、歩きやすくなっています。そこにでは、柱状節理の反対側も見ることができます。侵食が激しいようで、あまりきれいではないのと、節理の規則性がやや崩れているように見えます。海食されているので、上面を形状を広い範囲に渡って観察することができます。ぐるっとひと回りするのがお進めです。
以前は、国道沿いでアプローチがしやすいので、柱状節理がよく見えるところからのみ見ていました。今回は、時間をかけて露頭を探しながら見ていくと、いろいろな角度から節理を眺めることができました。そして、自らの足で歩きながら見ていくことで、マグマの大きさを感じることもできました。
今回で2度目でしたが、天気の悪い時に当たっていたので、きれいな景観として見ることができなかったのが残念です。しかし、壮観さは感じることはできます。こんなにアプローチがいいところで、きれいない柱状節理に直に接することはできるのはいいものです。機会があれば、天気のいい時に、再訪したいものです。
・災害・
6月には大阪で大きな地震があり、
今回の大雨による災害では、京都でも被害が発生しました。
母の住んでいる地域では、幸いなことに、
地震で揺れ、大雨も降ったのですが、被害はでませんでした。
知り合いがいる、愛媛県西予市では大きな被害がでました。
私も2010年4月から1年間滞在したところでした。
役場に勤めている知り合いに連絡をしたのですが、
多分、忙しくてメールを見る暇はないようです。
ネットでいくつかのニュース画像をみましたが、
知っている町や河川が様変わりしていて驚きました。
道路も、あちこちで寸断されているようです。
微力ながら、ふるさと納税で
見舞金を送らせていただきました。
一日も早い復旧を願っています。
・マグロ・
日本人は縄文の遺跡から
マグロの骨もでているようで
食用として古くから
なじもある魚だったようです。
ですから、当時からマグロを取れるような
漁猟の技術も優れていたと考えられます。
古事記や万葉集にも
「シビ」という名称が記述されているそうです。
マグロは昔も今も、日本人には馴染み深いものでした。