九州大分の山奥に、不思議な景観を見せる地域があります。車の利用ができる現在でも、狭い道は難所となり、時間がかかります。山間の奇岩には、自然の営力と人の営みが作った景観がありました。
耶馬溪は「やばけい」と読みます。大分県中津市にある景勝地です。中津市は国東半島の西、瀬戸内海側に面して発展している街ですが、内陸には山地を抱えています、その山は、阿蘇、九重の北にあたり、奥深い山間となります。耶馬溪は、そんな奥深い山間にあり、耶馬日田英彦山国定公園に指定されている景勝地でもあります。
秋に大分に行った折、耶馬溪を見ておきたいと思い、半日かけて足を伸ばしました。あいにくの雨が降ったり止んだりの空模様だったのですが、車での移動だったので、訪れることにしました。由布院から玖珠(くす)川を下り、玖珠から県道28号線で尾根を越えて、山国川に入ります。山国川の上流に位置する奥深い山間に耶馬渓はあります。
耶馬溪は、もともと現在「本耶馬渓」と呼ばれる地域を指すものだったのですが、その後、似た景観が周辺にあるので、裏耶馬渓、深耶馬渓、奥耶馬渓などと呼ばれる景勝地もできました。私は、深耶馬渓から本耶馬渓にぬけ、その後もどって、院内に抜けて別府に向かいしました。
深耶馬渓は奥深い山で、「一目八景」と呼ばれるところが有名です。深い谷あいを通る道を抜けていくと、ここにたどり着きます。一目八景は、観光地としても有名なので、展望台、散策路や駐車場なども整備され、土産物屋も軒を並べています。公共の駐車場に車を置き、散策路を歩き、展望台から奇岩類を見学しました。
一目八景は、いくつもの切り立った岩稜や奇岩が連なったところにあります。一目八景は、一目で、海望嶺、仙人岩、嘯猿山、夫婦岩、群猿山、烏帽子岩、雄鹿長尾嶺、鷲の巣山の8つの景観が見られるということから付けられた名称です。切り立った岩稜が連なるのですが、この岩稜を形成している岩石は、新生代の火山活動によるものです。
主に火砕流による火山噴出物がたまったものです。火砕流がたまった時はまだ熱かったため、溶結凝灰岩になっているところがあります。溶結とは、一旦溜まった火山灰がその熱のため、火山灰の一部が溶けたり、固まったりしたものです。ぶ厚くたまった火砕流ではよく見られる現象です。溶結凝灰岩は、火山灰より固くなっています。また、溶結凝灰岩には、柱状節理が発達しています。節理は直行していることが多いため、切り立った崖や箱状の谷になっていることがあります。
火砕流は、猪牟田(ししむた)カルデラという火山でした。約100万年前に活動した火山で、九重山の北にあり、今では埋もれてしまったカルデラとなっています。この火山の火山灰は特徴があり、ピンク色をしていることから「ピンク火山灰」と呼ばれています。ピンク火山灰は、噴出のとき偏西風にのって遠くまで飛んだことが確認されています。近畿から、房総半島や新潟まで見つかっています。
耶馬渓にはもうひとつ見どころがあります。それは、「青の洞門」と呼ばれるところです。青という地にある洞門です。洞門とは、トンネルのことです。青の右岸には、切り立った断崖があります。下の方は溶結凝灰岩ですが、上部には火山角礫岩が見えていました。青の上流は跡田川とよばれる山国川の支流があります。この支流から下るための道が断崖となっています。少し下流には平らな河原(河岸段丘)がありますが、そこに出るまでが険しい道となっていました。現在では、両側に道ができていますが、かつては、鎖だけを頼りに通るような危険なところで、命を落とすようなこともあったそうです。
諸国遍歴の旅の途中にこの地を訪れた禅海和尚は、この危険な道を見て、安全な道をつくる必要があると考え、托鉢で資金を集めて洞門の掘削をすることにしました。そして、1763年に30年かけた洞門は完成しました。今では改修、拡張がなされていますが、それでも車一台しか通れないほどの隘路です。信号で交互に通ることになっています。途中には明かり取りの切り抜き窓もあります。
石工たちが掘った昔のままの洞門も残され、歩いて見ることができるようになっています。そこでは、多数のノミの跡が残されています。人の苦労を感じさせる洞門です。
日本各地で耶馬溪と呼ばれる地域があるのですが、由来はこの地にあります。そして、耶馬渓という呼び名も、実は当て字だったそうです。頼山陽は、1818年(文政元年)にこの地を訪れたことがあるそうです。この地を漢詩に読みました。「山国谷」と呼ばれていた地なので、中国風に耶馬渓という漢字をあてて、「耶馬渓天下無」と詠みました。そこから耶馬渓という名称ができそうです。
洞門は、溶結凝灰岩に掘ったものなので、溶岩や花崗岩と比べると柔らかく掘りやすかったと思います。また洞門にしても崩れないほどの硬さもありました。しかし、個人の托鉢による資金調達と、人力で掘り進めたため時間もかかったのでしょう。
青の洞門の上には、鎖場の見える切り立った岩稜がみえます。これは登山道のようですが、昔の険しさを彷彿とさせるものです。青の洞門では、自然への人の適応力のたくましさとコツコツとした努力の成果を感じます。一方、奥の耶馬渓では、溶結凝灰岩だから柱状節理ができたため、切り立った岩稜ができました。時に、節理面にそった平らな河床もあります。
溶結凝灰岩に対する人力と自然の営力の現れの違いを見出すことができます。
・根雪が消えた・
北海道は、11月末か12月にかけて
まとまって何度が雪が降りました。
これは根雪になるのかと思っていたら、
道路の雪はすべて解けてしまいました。
あちこちに小さな雪山が残っています。
まるで春先のような景色、路面状態になっています。
史上最大のエルニーニョが発生しているといいます。
セオリーどおりなら、暖冬になるはずなのですが。
そうなれば、雪かきで大変な思いをしている
北海道民は助かるのですが。
どうなることやら。
・繁忙期・
卒業研究の最後の締め切りを迎えています。
なかなか時間がとれずに、
とうとう締め切りを過ぎての発行となりました。
申し訳ありませんでした。
なんとか日にちだけはずれずに発行することができました。
一番忙しい時期があと少しで終わります。