知床半島の先端に知床岬があります。岬までは道路もなく、たどり着くのは困難です。しかし、遊覧船を利用すると、上陸はできませんが、だれでも知床岬を眺めることができます。
知床岬を、年頭に紹介したいと、以前から思っていました。北海道の中でも知床は、私にとってもっとも興味があるところで、以前から訪れるからには、じっくりと時間をかけて見て回りたいと考えていました。見たところが見れた時、紹介しようを考えていたのですが、3年越しになりました。それは、見たいポイントへ、なかなかたどり着けなくて、何度も訪れることになったためです。
2019年6月、最初の訪問で、いきたい場所として、知床岬、知床峠、知床五湖、フレべの滝、オシンコシンの滝、カムイワッカの滝、知床硫黄山と考えていました。もちろん優先順位がりました。知床岬と知床五湖でした。
知床五湖とフレべの滝は、クマの出現で入れなくなり、知床峠へは2度も訪れたのですが、霧で全く展望がありませんでした。見れたのは、知床岬とオシンコシンの滝でした。
時期を選ぶ必要があると考え、クマの出没が落ち着いている2019年10月に訪れました。カムイワッカの滝へはマイカーで入れましたが、フレべの滝、知床五湖がクマの出現で、または入れませんでした。知床峠も霧で眺望はありませんでした。
2020年は新型コロナウイルスで出かけられませんでしたが、2021年に出かけられるようになった時、9月の訪問で、知床五湖、フレべの滝、そして晴れた知床峠の景色を眺めることができました。
知床硫黄山は断念したのですが、それ以外の知床でいきたいところは、足掛け3年かけて、やっと訪れることができました。その結果は、2019年6月の「174 知床半島:雁行の並び」と2021年10月の「202 硫黄山と知床五湖」として、このエッセイで紹介しました。
以前から知床岬をエッセイで取り上げたいと考えていました。しかし、それは見たいところ一通りみてからと決めていました。そして、念願を叶えるのは年のはじめと考え、今回のエッセイにしました。
知床にいったら、テレビなどで象徴的に示される知床岬の先端にある、きれいな海岸段丘を、自分の目で見たいと考えていました。いきつくためには、数日間のキャンプをしながら、かなりのアップダウンの道のりを進まければなりません。私にはそのような体力はありません。
知床岬へのもうひとつのアプローチとして、上陸はできませんが、遊覧船で先端までいって遠くから眺めるという方法があります。2019年6月、最初に知床を訪れたときに、知床岬までいく遊覧船に乗って見ることにしていました。
この遊覧船は、ウトロから出航して、岬近くまで海岸を見学しながら進むものでした。幸い、波も穏やかで、晴れていはいませんでした、眺望のきく航海日和でした。私のメインの目的は知床岬の海岸段丘ですが、途中で海食崖、火山地帯、溶岩などを遠望できました。運がよければ、ヒグマも見ることができとのことでしたが、幸い3箇所でみることができました。
半島の先端の知床岬では海岸段丘がありますが、半島の両側の海岸線は切り立った断崖が連なっています。半島の崖の連なる険しい景色から、先端に着くと、突然、海岸段丘の穏やかな景観が見えるという、コントラストが魅力になっています。半島の崖沿いには少しでも浜があれば、番屋が建っています。人の営みのたくましさと、知床の海の豊かさを感じさせます。
知床の地質はすでに紹介していますが、概要を復習しておきましょう。活火山も含んだ火山が列をなしています。多数の峰がありますが、主だったものとして、知床半島の付け根(南西側)から斜里(しゃり)岳、海別(うなべつ)岳、遠音別(おんねべつ)岳、知西別岳(ちにしべつ)、羅臼(らうす)岳、知床硫黄岳、知床岳が連なります。第四紀の火山で、90万年前から現在にかけて活動した火山です。中でも、羅臼岳は1660mの標高があり、知床半島で最も高い標高をもつ活火山となっています。
知床半島は、火山だけでなく、その下(基盤)には、900万から100万年前(新第三紀の中新世から更新世にかけて)の泥岩、砂岩、海底火山噴出物の地層があります。この地層は、海底で溜まったもの(海成層といいます)で、古いものから、忠類(ちゅうるい)層、奥蘂別(おくしべつ)火砕岩層、ヌカマップ火砕岩層、越川層、幾品層、知床岬層に区分されています。長い火山活動と海成層の堆積の時代がありました。
知床半島の形成は、プレートの斜め沈み込みによって押されたためにできました。圧縮で中央部(知床山脈の部分)が持ち上げられ(背斜構造とよばれるもの)、その軸方向(知床半島の伸びる方向)の中心は引っ張られることになり、割れ目ができます。そこに沿って火山噴火が起こります。このような地質環境ができたため、海底での火山活動による火山砕屑物と堆積物が、継続的に海底にたまりました。それが基盤となりました。
背斜による上昇が継続したため、半島周辺に深い海底ができます。その境界には切り立った崖ができます。崖が今も切り立っているということは、知床半島は今も上昇を続けていることになります。知床半島の上昇と火山活動が継続することで、やがて陸地での火山活動へと変わってきました。そのすべての原動力は、太平洋プレートが斜めに沈み込んでいるためです。
岬の先端付近にだけに、海岸段丘があり狭いですが平野となっています。知床岬の段丘面が、穏やかな景観を形作っています。地形解析によると、100m前後(高位段丘面)、70m前後(中位段丘面)、20m~30m(低位段丘面)が見分けられています。これは、何度かの断続的な上昇運動があったことを意味しています。低段丘面が知床岬の先端に広がっていますが、地図では、岬周辺の海中には波食棚の地形もみられます。
知床半島の先端が持ち上げられる力が、今も働きつづいてることになります。もし隆起活動が起これば、さらに段丘面がひとつ加わりることになります。
知床岬だけにある何段か海岸段丘の存在は、知床半島、あるいは北海道の生い立ちを示していたのです。
・繰り返される大雪・
明けましておめでとうございます。
北海道は12月末から1月中旬にかけて、
何度も寒波が襲来しました。
そして今週も寒波が襲いました。
その度に、道路も雪で狭くなり、
JRも空の便でも交通が乱れました。
大量の積雪で除雪もおっつかない状態が
繰り返し起こっています。
久々に大雪に何度も悩まされる冬になっています。
・大学入学共通テスト・
このエッセイが届く時は、
大学入学共通テストが実施されています。
我が大学も会場になっています。
教職員総出で、試験に対応しています。
コロナ対策に加え、大雪への対処も
必要になるかもしれません。
全国統一して、さまざまな対象が
細かく規定されています。
そんな事態にならないことを
願うしかありませんが。