2022年10月15日土曜日

214 青い池:複雑な連鎖

 十勝岳は活火山で、かつて火山噴火で大きな被害を出しました。防災対策として堤防がつくられました。火山の成分を含んだ川と防災によってできた池が、観光地となりました。複雑な連鎖が起こっています。


 9月中旬に十勝岳を訪れました。夏休みも終わり、紅葉にも早い時期、そして平日にでかけました。人が少なくなる時期を見計らってでかけました。ところが、有名な観光地では、多くの人が訪れていました。ここしばらく、コロナ禍で人出の少ない状態を見ていたので、より多く感じたのかもしれません。
 今回、十勝岳を訪れたのは、周辺の地質を見るためです。「青い池」という観光地も、目的のひとつにしていました。「青い池」は、その幻想的な色が魅力です。普通の水の色ではない、不思議な色合いになっています。写真をみてその色を確かめて欲しいのですが、本当にきれいな色合いです。今では、この付近ではもっと賑わう観光地となっていました。
 もうひとつの目的は、青色の源となっている「白ひげの滝」を見ることです。十勝岳周辺は、以前にも回ったことはあるのですが、青い池も白ひげの滝もみていませんでした。ですから、今回はじっくりと見学することにしました。
 「青い池」と呼ばれていますが、青より淡いコバルトブルーで、さらに濃淡もあり、光が当たれば淡くなり、影では濃く見えます。水底の状態でも色合いが変わります。
 青い池は、防災工事の後に水たまりできた池でした。1926(大正15)年5月の十勝岳の火山噴火で、大規模な水蒸気噴火が起こりました。その時、山頂にはまだ残雪があり、雪が溶けて大規模な火山泥流が発生して、美瑛川と富良野川に大きな被害をあたえました。火山泥流は、美瑛川では、上流の白金温泉街から美瑛の街までを襲い、多くの死者、行方不明者をだしました。
 十勝岳の火山噴火による被害を教訓にして、洪水や氾濫を防ぐために、美瑛川では砂防堤防がつくられました。1988(昭和63)年には、さらにブロック堤防もつくられました。ブロック堤防は、十勝岳の噴火で泥流が発生した時、それを食い止める目的でつくられました。
 ブロックの外側は、もともとは増水時に周辺への浸水を防ぐためにつくられた緩衝地帯でした。緩衝地帯に美瑛川の水がたまり、池となりました。水の出入りがあまりない池ですが、それが幻想的な青い色の池となっていました。
 もともとは立ち入りが禁止されていたところだったので、有名になり見学者が多くなったため、町おこしとして、遊歩道や駐車場を完備し、土産物屋もできました。今では、この付近では一大観光地となってきています。
 池の水の色は、普通の水の色ではありません。どのようにして、このようなコバルトブルーの色がついたのでしょうか。答えは、美瑛川の上流にあります。3kmほど上流に「白ひげの滝」と呼ばれものがあります。これは、尻無沢が合流しているところです。川から流れ出ているものもありますが、地層の間から湧水として流れ出しているものがあります。滝を注意して見ると、白っぽい乳白色の堆積物が出ているところあります。
 白ひげの滝は崖となっています。崖の下には、30万年前の土石流で流れ出た礫岩が溜まっています。その上には17万から25万年前の平ヶ岳溶岩が板状に見えています。下の砂礫から流れ出た水は酸性になっているため、乳白色の沈殿物がたくさんできて見えています。
 この色についは、福島大学の高貝・阿部(2014)で調べられていて、アルミニウムのサイズの不定形で、組成もバラバラのコロイド粒子になっていることがわかっています。その形状が短い波長の青い光をたくさん散乱するため、青く見えるようです。
 滝の下を流れている美瑛川の河原の中の石を見ると、乳白色の沈殿物ができています。沈殿物の周辺の水が、コバルトブルーに見えています。川全体がそのような状態になっています。さらに、白ひげの滝の上流を流れる水も青く見えています。上流でもやはり十勝岳から流れている硫黄沢川があります。そこでも乳白色の沈殿が起こっているようです。
 火山地帯を流れた川や地下水にはアルミニウムが多く含まれていて、それが中性で水量の多い美瑛川の水にふれることで、コロイド粒子ができるようです。下流の青い池の色も、この複雑な作用の連鎖が原因となります。
 青い池では流れることがないので、水面が穏やかなので、より水の色がより青く見えています。そこに立ち枯れの木が多数あるので、幻想的雰囲気をより醸し出しています。
 十勝岳の火山の成分のアルミニウムを含んだ水が、川に入り込んで青い水になました。十勝岳の噴火による被害の防災のために河川工事をしたところ、その緩衝地帯に思いがけず水たまりができました。青い川の水が流れ込んで青い池ができました。今では防災のための池が、観光にも利用されるようになりました。十勝岳では、このような自然災害と防災、そして観光の不思議な連鎖が起こっているようです。

・観光・
外国人観光客もちらほら見かけました。
国内在住の人もいたでしょうが、
観光バスで海外旅行として
来られている人も含まれているようです
観光業界として望ましいことなのでしょう。
静かに露頭を見たにものには
少々騒がし感じました。
まあ、そんな希望は稀なものでしょうね。

・昔の訪問・
当時の記録をみると、
以前訪れたのは2005年7月でした。
天気は悪くはなく十勝岳は見えていたのですが
霞んでいたため、すっきりとしは見えていませんでした。
今回は晴れていたのできれいにみることができました。
青い池も当時は観光地にはなっていず、
白ひげの滝のところも通り過ぎただけでした。
まあ、知っていたとしても、
立ち入り禁止だったのでしょうから
みることはできなったでしょうが。