2020年10月15日木曜日

190 スコットランド:ハットンの不整合

  2002年に訪れたスコットランドを紹介します。訪れたところは、ジェームス・ハットンが見つけた不整合の露頭です。この不整合は、斉一説という現在の地質学にとっても重要な概念を導入するものでした。


 今年は野外調査に出れないので、以前行った地域を紹介しています。今回は、イギリスのスコットランドです。2002年に訪れた時の話しですから、現状では変わっているところがあるかもしれません。ご了承ください。

 現在、本の執筆をしているため、その準備で地質学史の概略をまとめています。すると、地質学はイギリスで発祥したことがよくわかります。今回は、ジェームス・ハットンが地質学の重要な概念を示したイギリスのスコットランドを紹介します。

 スコットランドの地質図をみると、東-西から北東-南西に伸びる大きな断層が何本かあります。エディンバラの北には大グレン断層が、南にはハイランド境界断層があります。それらにはさまれた地が、エディンバラとなります。大グレン断層は、北東-南西方向に伸びて、アイルランド地域に大きなくびれをつくっています。この断層内には、ネッシーで有名なネス湖などがあります。ハイランド境界断層は、イングランドとスコットランドの境界付近にある断層です。この断層の北側には、シルル紀の地層を主としていますが、デボン紀の地層が不整合によって重なっています。南側はデボン紀から石炭紀の地層を中心としています。これらの地層は、カレドニア造山運動で形成されたものです。

 エディンバラの西方に不整合がみられる有名な露頭があります。ハットンが最初に不整合を記録したところです。シッカー・ポイント(Siccar Point)というところで、「ハットンの不整合」と呼ばれている露頭があります。ハットンは船でこの地を訪れましたが、私は道路から牧草地を歩いて、崖を下ってたどり着きいて、やっと見ることができました。初日は牧草地から、急な崖を降りて海岸にたどり着いたのですが、帰りにはこの海岸に降りる道を見つけ、2日目には楽に登り降りできました。

 さて、不整合とは、地層と地層の間に、堆積物がたまらず、侵食を受けたもので、地質学的には大きな異変が起こったことを意味します。その異変とは長い時間をかけて起こったものです。水中に地層がたまる環境がありました。その堆積場が上昇して陸になります。陸地になると風化や浸食により、地層が削られていきました。陸地が再び沈み海になり、新たな地層がたまってきます。その境界が不整合となります。その海で溜まっている地層が再度陸地になることで、私のたちの目に触れることになります。不整合の上下は、長い時間の間隙があり、時代も構造、岩質も異なる地層が接することになります。不整合とは、「証拠が消失した大きな地質学的異変」ことで、そして「証拠のない」証拠でもあるのです。

 このような不整合の存在とその地質学的意味を最初に示したのが、ジェースム・ハットンでした。不整合という地質現象を、上で述べたような科学的な解釈を示しました。そのため、ジェームス・ハットンは、近代地質学の祖と呼ばれています。

 「ハットンの不整合」は、シルル紀の地層の上に、デボン紀の地層が、不整合で重なっています。シルル紀とデボン紀の地層の境界は、イングランドやウェールズでは、不整合ではなく整合で重なっています。スコットランドでは、傾斜した不整合になっています。

 シルル紀の地層は、ぺらぺらとはがれやすい性質(葉理の一種)の粒の細かい砂岩から泥岩と、粒の粗い白っぽい砂岩との繰り返しの地層です。この地層は、海でできた地層で、褶曲し断層や割れ目がたくさん形成された色の濃い砂岩から泥岩からできています。この堆積物は、かつてスコットランドが属していた大陸ローレンシアという大陸の前面にあったイアペタス海の沿岸や海底にたまったものです。地層の最下部には、礫層(基底礫層といいます)があります。このような基底礫のあることも、不整合の有力な証拠となります。

 デボン紀の地層は、赤から赤褐の色をもった砂岩からレキ岩の粒の粗い堆積岩からできています。赤い砂岩は、「旧赤色砂岩」と呼ばれる岩石です。旧赤色砂岩は、イギリスのカレドニア造山運動でデボン紀(4億850万~3億6250万年前)を象徴するもので、イギリスやアイルランドに広く分布しています。スコットランドでは、層厚が5000mに達するところもあるようです。このような堆積物は、山脈に囲まれた湖(オルカディ湖)で、川の浸食で多くの堆積物が運び込まれた環境でたまりました。石材としてよく利用されているので、エディンバラの建物は赤い石で建てられた、赤い町並みとなっています。

 ハットンは、不整合に代表されるような地質現象が、長い時間をかけて起こるため、地球の景観は、何百万年もかけてつくられたのだと論じました。これは、斉一説と呼ばれる考え方です。ハットンは、斉一説の考えで、地質学の基礎を構築しました。斉一説とは、現在起きている地質現象が、過去にも同じように起きていたという考えです。この説は、地球の歴史を調べるうえに、「現在」が有力な情報を与えてくれることになります。背一説を象徴する言葉として、「現在は、過去の鍵である」という言葉があります。

 ハットンの斉一説は、激変説(あるいは天変地異説)と対立しました。激変説は、フランスの博物学者キュビエらが中心となって唱えていました。激変説では、地球の歴史は4000年ほどで、その間、大洪水や大地震に何度もおそわれ、破壊が繰り返されたとする考え方です。斉一説か、激変説か、大いにもめましたが、ハットンの考えを踏襲したライエルが、斉一説を広めたことで、激変説は衰えました。

 激変説は、聖書にあるノアの洪水などにつながっていたので、斉一説の普及はキリスト教の力に陰りをもたらすことになりました。ライエルの斉一説に基づいて、ダーウィンは進化論を提示しました。進化論は自然選択という長い時間を要する変化によるものでした。その長い時間を、地質学の斉一説が保証してくれたのです。


・GoToキャンペーン・

GoToキャンペーンでさまざまなものに

ポイントや割引が適用されています。

ずるい使用やお金持ちの厚遇などの問題もあるようです。

このような税金のバラマキの使い方に

疑問を感じているのは、私だけでしょうか。

多くの人が多くの組織が、

コロナ禍で傷んでいることは事実です。

旅行業も宿泊業も傷んでいるでしょうが、

医療をもっとも最初に、手厚い手当を

していくべきではないでしょうか。

今回のコロナ禍を現状の程度でとどめているのは

医療従事者の努力のおかげです。

そこへの重点的手当は国民のだれもが

納得するものだと思うのですが。


・過度の適応・

大学の遠隔授業は継続しています。

小中高校では通常授業が再開されています。

小中高校は学習指導要領の縛りがあるため、

授業をしなければなりません。

それに遠隔授業をできる準備もできていません。

大学は遠隔授業への備えがあり、

急な対処にせまれましたが、なんとか持ちこたえています。

本来対面授業でするべきことを

遠隔授業でおこなっていては、

本来の学びの効果へは達しないように思えます。

それに学びだけが学校生活ではないはずで、

人間的な結びつきが希薄なままで

大学生活をすごしていいのでしょうか。

コロナ禍はすぐに終わりそうにありません。

このまま何年も続くようだと、

教師も学生も遠隔授業への過度適応がおこり

歪な大学生活になってくのではないでしょうかね。