2023年3月15日水曜日

219 館の岬:自然の営みとしての変化

  道南の乙部町には、きれいな縞模様の見える海岸の崖が名所です。その崖が大雨のために崩落しました。生活道でもある国道が、崩落で使えなくなりました。なぜ崩落し、どう復旧していくのでしょうか。


 2020年から2022年にかけて、COVID-19で社会が振り回され、それ以外のニュースは、影を潜めていたように思えます。その期間にも、災害がいろいろ起こっていたはずなのですが、人身に及ばなけば、メディアでの扱いは大きくなりません。災害が地元の人にとって、長期にわたって苦労を強いるものであっても、世間から顧みられることは少なくなります。そんな災害が、道南の乙部町で起こりました。
 乙部町は、日本海に面した道南の町です。道南の日本海側には、観光名所もいろいろあるのですが、観光客がそれほど多くは訪れないようです。乙部町は、地質学的には見どころがある地域であるとともに、居心地がいい町なので、何度も訪れています。
 国道229号が海岸沿いに通っており、そのコースは心地よいドラブができます。北から向かうと、まずは鮪(しび)の岬で、見事な柱状節理が目に入ります。脇道にはいっていくと、柱状節理の上を歩いて、先端までいけます。
 国道をさらに進んでいくと、館の岬で海岸線の崖にたどり着きます。その崖には、見事な地層が見えます。現在、海岸沿いで崖があるということは、崖の切り立った面が常に更新されているということで、侵食が現在も進行しているということです。そのため、大雨などが降ると、割れ目などがあると崩落してしまいます。
 2021年6月に、館の岬の地層が崩落しました。5月16日から17日かけて大量の降雨があり、6月4日にも激しい降雨がありました。2021年は、4月から降雨量が多く、過去10年の平均の2倍ほどになっていました。この崖は、凍結融解による地盤の緩みがあったようで、そこに大量の降雨がありました。
 6月6日(日曜日)18時過ぎに、この崖が崩壊しているのが発見されました。崩壊規模は、幅35m×高さ40m×奥行き5mでした。崖と国道の間には防御壁もあったのですが、それを乗り越えて崩落してきました。
 幸い人的被害はなく、防御壁と道路の被害だけになりました。しかし、この崩壊で国道は通行できなく、迂回をしなければなりませんでした。もともとあった道を利用する迂回路は、17kmもあり、生活道として必要な人は使うでしょうが、国道を通るために、この迂回路を利用するのは面倒になります。
 この崖は、舘層(たてそう)と呼ばれれう地層からできています。新第三紀の中新世(2300万年前から250万年前)の地層です。
 これらの地層は、いずれも層状の互層になっているため、縞模様がきれいな崖となっています。「東洋のグランドキャニオン」とも呼ばれています。地質学的には興味深いところです。
 舘層は、火山砕屑岩(凝灰角礫岩、凝灰岩、軽石凝灰岩)と堆積岩(泥岩から砂岩)からできています。下には、泥岩から凝灰質砂岩があり、上に凝灰角礫岩から凝灰岩、軽石凝灰岩、凝灰岩などが重なっています。舘層の岩石は、それほど硬くないもので、雨や水に侵食されやすいものです。
 その上に第四紀の更新世(250万年前以降)に段丘堆積物が覆っています。舘層の上の段丘の堆積物は、砂や礫からできています。段丘の堆積物は、まだ固まっていないので、より侵食を受けやすくなります。段丘の地表の谷沿いには、地滑りも起こっています。
 崖の更新や侵食は、人の時間の流れよりずっとゆくりした、自然の時間の流れで進みます。人は防災として、自然の時間の流れを予測して対処していなければなりません。自然の営みを予測することは容易ではありません。同じ危険度が継続するのではなく、長い時間崩落がないときほど、崩落の危険性は大きくなるはずです。そのような時間変化も考慮しなければなりません。
 この崖の下の国道を復旧しようとしても、今後も似た崩壊が起こるような地層からできています。現状の国道を復旧しても、崩落の危険性は残るため、完全に復旧するためには、いろいろな検討がなされ、山側の新たに2kmのトンネルを掘削することが、もっとも安全だということで合意されました。そのためには、7年から10年の工期がかかることになります。
 完成までに長い時間がかかり、現状の迂回路ではあまりに不便で、生活にも支障をきたします。そこで、2022年4月に、崖の上を通る「応急復旧短絡路」がつくられました。
 2021年6月の崩落の直前、5月に乙部町を訪れています。その後、崩落が起こりました。2022年10月には再度訪れたときは、段丘の上に真新しい迂回路ができていました。この新しく整備された短絡路は、勾配もきつく、急カーブも連続します。大型車は通行できませんが、生活道として利用でるようになりました。ただし、夏場の応急道路なので、冬場の夜間は通行止めとなっているそうです。
 館の岬の崖は、現在での通行止めのところから、眺めることができます。崩落以降、トンネルの北側には近づけません。長いトンネルが完成すると、崖に近づくことはもっと難しくなるかもしれません。トンネルは地質学的には残念ですが、人の命、人の生活、安全が優先されるべきでしょうね。

・学位記授与式・
コロナ禍もおさまり
通常の生活もだいぶどってきました。
大学では学位記授与式が通常通りにおこなわれます。
ただし、3つに分散しておこなわれます。
飲食はできませんが、今年から3年ぶりに、
大学の公式の祝賀会も実施されます。
現在の4年生とはコロナ禍で、
まったく懇親会をすることができませんでした。
やっと緩和されたので、最後ですので
ゼミでの祝賀をしたい思っています。

・マスク着用の緩和・
13日から、マスク着用が緩和されました。
しかし、施設内や狭いところでは、
着用が推奨されています。
多くが個人の判断にまかされます。
これまでの風邪と同じ状態になりつつあります。
5月にはCOVID-19も2類から5類になり
インフルエンザの同じ扱いになります。
マスク着用はどうなるでしょうかね。