2024年1月15日月曜日

229 鳴門海峡:渦潮のできる海峡

 鳴門海峡の渦潮は、世界でも有数で、有名な観光地ともなっています。見る手段も、陸地、橋、船からなど、いろいろとあります。渦潮は、海水の運動によるものです。しかしその背景には、地形や地質の条件が関与しています。


 サバティカルの中の昨年の9月に、淡路島と鳴門海峡にでかけました。四国と近畿の間に淡路島があり、淡路島と四国の間に鳴門海峡があります。鳴門海峡は狭く、瀬戸内海への潮が出入りするとき渦潮ができます。狭い海峡は多くあるのですが、ここでは大きな渦潮ができます。その条件を考えていきましょう。
 渦潮の様子は、徳島の鳴門側からも、淡路島側からの陸地かも見ることができます。淡路島の鳴門岬へは、工事中で入ることができませんでしたが、「道の駅うずしお」から眺めることができます。壮大の規模の大鳴門橋の下に見えるのですが、どしても遠目に見ることになります。
 渦潮だけを見たい時は、遠すぎます。大鳴門橋(全長1629m)から見るのが、上から見下ろすことになり、一番よく見えます。しかし、自動車道なので、止まることはできないので、車から横目で見るだけです。
 渦潮は、船から見るのが、なかなか迫力があります。大潮の日からは、少し遅れたのですが、渦がよく見える時間帯を選んで遊覧船に乗りました。残念がら当日は激しい雨でした。遊覧船には室内の窓からだけでなく、外で屋根がついたのデッキがあったので、そこから見ることができ、写真も撮影することもできました。近くでみるのは迫力満点です。しかし、近すぎて全貌がみれないという難点もあります。
 徳島側からは、鳴門大橋の内部に「渦の道」があります。そこでは、歩いて橋の下の渦潮を見学することができます。以前にも来たことがあったのですが、再度、訪れました。真上から渦潮を見ることができました。
 今回は、渦潮を、各所で別角度から、何度もみることができました。
 そもそも渦潮とは、潮の満ち引きが原因です。そのため、一日に二回、干潮と満潮があります。つまり、6時間ごとに干満が繰り返されます。
 大きな渦潮ができる理由は、地形にあります。鳴門海峡は、1.3kmほどしかなく、狭くなっています。北側の播磨灘では深度200m、南側では140mで、海峡の深度は90mです。広いところから、狭いところへ、海水が一気に流れ込むと、ベルヌーイの定理が働きます。ベルヌーイの定理とは、広いところから狭いところにいくと、流速が速くなるというものです。また、海峡でも中央部で流れが速くなり、周辺部で遅くなります。このような水の流れの速度差から、海峡の岸に近いところで渦潮ができます。渦は、鳴門側は右回転の渦ができ、淡路島側は左回転の渦となります。一方、満潮時の渦潮は、鳴門側に左回転の渦が。淡路島側は右回転の渦ができます。いずれの渦も、海峡の下流側にできます。
 渦潮の最大直径は20mにも達します。乗った遊覧船のサイズの同じ程の渦潮ができます。船から見ると、かなりの迫力になります。
 さらに、大きな海水の運動が起こっています。
 満潮の時、紀伊水道からの海水が、播磨灘へ入ろうとしますが、狭いためため、海水の流れが速くなります。このときにも渦潮ができます。ただし、広い海から狭いところに海水が入ろうとするのですが、入りきれず、淡路島の東へ回り込み、広い大阪湾から明石海峡へ回っていきます。海水が、淡路島の西の播磨灘へ到着するのに、5、6時間ほどかかります。その頃には、鳴門海峡は干潮になっています。紀伊水道側に海水が引き込まれる条件になっています。播磨灘の海水が、一気に鳴門海峡に流れ込むことになります。
 渦潮には、異なった運動周期も関係しています。干満のサイクルは、月の引力と地球の自転によって起こります。月に位置は、満月と新月の時期には、太陽と月、地球が一直線になるため、最も月の引力が強く働きます。その時、干満のもっとも大きな大潮になります。大潮は、一月に二度起こることになります。その時期には、より大きな渦潮ができます。渦潮には、一日のサイクルと、一月にサイクルもあることになります。
 次に、サイズと時間スケールをより大きくして、地質学的に見ていきましょう。
 中央構造線が淡路島の南側、紀伊水道側を通っています。中央構造線の南側に海があることから沈降していることになります。四国や南紀では、中央構造線の南側には、三波川変成岩があります。しかし、紀伊水道側は沈降していて、どのような石が分布しているかはわかりません。ただし、淡路島の南にある小さな沼島には、三波川変成岩が分布しています。ですから、紀伊水道になっているところも、沈降しているのですが、三波川変成岩があることがわかります。四国と紀伊半島の地質は、央構造線の南側でも連続していることがわかります。
 瀬戸内海には、四国や本州の出っ張りがあったり、島が多くあり、海が狭くなる「瀬戸」があります。また、海が広がる「灘」があります。それらが繰り返されていることを、以前のエッセイ「221 しまなみ海道:花崗岩の産状(2023.05.15)」で紹介しました。その原因は、花崗岩マグマが上昇しているところが瀬戸になっているといいました。花崗岩は、地殻の硬い岩石(基盤岩といいます)が、地上近くまで上がってきているところです。
 その原理が淡路島にも適用できます。淡路島にも花崗岩が分布しています。その両側が大阪湾と播磨灘になって沈降しています。大局的に見ると、中央構造線の北側は、隆起域と沈降域が繰り返されています。瀬戸内海の灘と瀬戸の繰り返しは、地下深部の花崗岩の上昇を生んだのは、中央構造線による沈降上昇運動が関係しているはずです。そこには、どのような仕組みがあるのでしょうか。
 海峡の周辺の鳴門や淡路島は、リアス式海岸の地形となっています。リアス式海岸は、この周辺が沈降していることを意味します。大きく見ると、東から播磨灘と大阪湾が沈降域、備讃瀬戸、淡路島、和泉山地が隆起域となっています。中央構造線の北側で、四国から近畿まで、そのような上下運動が起こっているようです。大きな斜め横ずれ断層があると、沈降域と隆起域が交互に繰り返されるという現象があります。そのような仕組みが、中央構造線の北側に働いのでしょう。花崗岩があるところが隆起域になり、花崗岩がないところが沈降域になっているようです。
 干満には一日と一月のサイクルがあります。瀬戸内には、隆起の沈降のサイクルが、長い地質学的時間と大きな規模で起こっています。鳴門海峡の渦潮には、両方の影響がみられ、いろいろなスケールの異なった原因で形成されているのです。

・大学共通テスト・
先週末に大学共通テストが実施されました。
我が大学も、試験会場になっていました。
2日間、かなりの雪が降ったのですが、
除雪がされていたので、
大きな支障もなく、無事試験は実施されました。
担当の試験室では、受験者の真剣な姿、集中している姿は、
監督者側にも緊張感がひしひしと感じます。
この時期は、大学では入試があるので、
そのような緊張感を何度も味わいます。

・論文ページ超過・
現在書いている論文の文章量が大幅に増えました。
投稿規程の制限の3倍の量となりました。
投稿規程を破ることになるので、
心苦しいのですが、
なんとか編集委員長と相談して、
載せてもらえないかと陳情しました。
検討するとのことでしたが、
3つに分けることにしました。
この雑誌に、1部掲載か2部掲載は
現在、相談中です。