2023年9月15日金曜日

225 石鎚コールドロン:多様な地質

 面河渓から石鎚へスカイラインと進み、瓶ヶ森へはUFOラインを通りました。車でいけるコースですが、中央構造線、石鎚コールドロン、火砕岩、花崗岩、礫岩、三波川変成岩など、多彩な地質を見ることができます。


 8月の下旬から後半の野外調査を再開しました。まずは、久万高原を通り県道12号西条久万線で面河渓に向かいました。山岳博物館は休館日だったので、さらに奥に向かい、一台しか通行できない狭い道を抜けて、行き止まりにある面河渓に到着しました。この日は、雲が流れていましたが、晴れ間が見える天気でしたが、観光客も少なく、落ち着いて散策できました。暑かったのですが、渓流沿いの涼やかな風が心地よかったです。
 石鎚のある地域は、大きな地質区分では、三波川変成帯になっているのですが、石鎚周辺は「石鎚コールドロン」と呼ばれる、新生代の約1500万~1400万年前(新第三紀中新世)の火成岩類と堆積岩が分布しています。
 コールドロンとは、地下深部にあったマグマだまりが陥没してできたもとと考えられるものをいいます。激しい火山活動でマグマだまりが空になってくると、地下に空洞ができ、そこが陥没していきます。それがカルデラとなります。新しい火山活動では、陥没地形が残されていて、カルデラと判別できます。ところが、時間が経過して、カルデラの地形が侵食されて明瞭でなくなり、陥没部の埋められていた部分が侵食されたり、深部のマグマだまりまで露出してくることがあります。そのように侵食されて地表にでてきたマグマだまりのうち、火山性の陥没構造をもったものをコールドロン(cauldron、大釜という意味)と呼びます。カルデラとは認めにくいものをコールドロンと呼んでいます。
 コールドロンには火山岩だけでなく、深成岩や火山噴出物も含まれているため、(火山‐深成)複合岩体となっていることもあります。火山岩と深成岩の関係やマグマだまりの形成過程の探求に重要な地質となります。カルデラの形成過程も、コールドロンから推定されてきたものです。
 石鎚コールドロンは有名で、その一部に四国最高峰の石鎚山(標高1982m)があります。形成過程は、1500万前ころから石鎚山周辺で火山活動からはじまります。環状に貫入したデイサイト質のマグマの岩脈を形成しながら、地表に噴出します。激しい火砕流を伴う大噴火がおこり、環状岩脈に沿って陥没が形成されます。それでカルデラが形成されたと考えられます。
 火山活動は継続して、カルデラは安山岩質マグマの火砕流堆積物(天狗岳火砕流堆積物)が埋めていました。この火砕流は分厚くたまり溶結凝灰岩となりました。石鎚山の西側に火砕流堆積岩が広域に分布しています。東側にはあまりありません。深部からまだマグマが上昇してきており、火砕流へと貫入していきます。それが花崗岩となりました。
 石鎚コールドロンは、きれいな丸い形状に分布しています。その中に、安山岩質の溶結火砕岩類と面河渓谷の花崗岩類があります。面河渓谷の河床をつくっている白っぽい岩石は、この花崗岩類です。この石鎚コールドロンから東の火砕堆積岩が広がっているのですが、その周辺には礫岩(久万層群)があちこちに分布しています。
 瓶ヶ森へ続く稜線は険しくなっていますが、瓶ヶ森山頂付近にはスプーンで削られたような、広く平らになってところがあります。礫岩の山なので、侵食には弱ためだと考えられます。それ以外の東側では、唐突に三波川変成岩に代わります。
 さて、瀬戸内海の面した西条から南側を眺めると、急傾斜の山並みが見えます。標高で1000mから2000m近くの山並みとなっています。そのような険しい地形は、中央構造線がつくった断層地形です。
 中央構造線は、1億年以上にわたって活動を断続的に続けている活断層です。ここ100万~200万年ほどは、右横ずれの運動をしていますが、垂直方向にも動いています。西条側から見ると石鎚は東に移動し、なおかつ隆起もしていることになります。石鎚周辺では、隆起速度は年間約2mmほどだと考えられています。
 面河渓からは、石鎚スカイラインを使って石鎚神社に向かいしました。早朝に出発したので、ここでやっと昼食となりました。その後、UFOラインと呼ばれる「いの町道瓶ケ森線」を通りました。UFOラインは、眺めがいいことで有名で、狭いところもあるのですが、多くの車、二輪車が通っています。しかし、土砂崩れの補修のため、通行できる時間が決まっており、タイミングが悪いと1時間近く待つことになります。店の人に、通行できる時間と確かめ、ちょうど昼休みで作業が中止され通行可能な時間のうちに、通るとにして進みました。噂通りの眺めのいい道でした。景色を楽しみにながら、ゆっくりといきたかったのですが、撮影だけを急いでして、通り抜けました。
 面河渓のルートから石鎚スカイライ、UFOラインは、石鎚コールドロンに関連した火成岩類と堆積岩、そして三波川変成岩、それらが中央構造線によって、落ち上げられている様子が見ていくことができます。

・調査再開・
8月は残暑が厳しく、天候も不順でしたが、
後半の野外調査を再開しました。
初日は、山の中なので天気を心配したのですが、
雲は時々かかっていたのですが、
山並みを眺めることができました。
山から降りたら、即座に
蒸し暑い空気が襲ってきました。
今年の夏は長く厳しいです。

・子持ち権現山・
子持ち権現山は、標高約1700mで、
険しい崖がUFO道路から見ることができます。
UFO道路は、瓶ヶ森へと続く
久万層群の分布域に沿って走っていきます。
約100mの崖は、久万層群に属する
礫岩からできているのが、遠目でもわかります。
そして途中からは三波川変成帯になります。
そこは土砂崩れ地帯になっていきます。