2023年6月15日木曜日

222 土佐清水:足摺と唐人駄場

 土佐清水はジオパークに2021年に認定されました。新しいジオパークを見ることができました。土佐清水に分布するの花崗岩が、いくつかの名所をつくっています。その花崗岩には特別な特徴があります。


 ゴールデンウィーク明けの5月上旬に、高知の足摺岬を訪れました。この地は、何度も来ているのですが、久しぶりの気がします。この地は土佐清水がジオパークになりました。2015年から推進協議会が発足して活動をはじめて、2度の申請をしたのですが、認定が見送られて、2021年に3度目に日本ジオパークに認定されました。四国で3つ目、日本で44箇所目の認定地域となしました。
 ジオパークでは、いろいろな活動方法がありますが、地域の人たちが、身近な大地(地質)を理解して、行動や考え方を新たにして(教育)活動しきます。その魅力を訪れた人にも伝えていく観光活動にもつながっていくことになります。このような地質を中心に地域が活性化していくことが重要な目的となっています。
 土佐清水ジオパークは、「黒潮と共に生きる 漁師が生まれる大地の物語」をテーマとしています。中心となる施設が、足摺宇和海国立公園竜串ビジターセンター「うみのわ」が竜串にあり、その隣には足摺海洋館「SATOUMI(さとうみ)」も新しく開館しました。うみのわは、2020年5月に開館しています。しかし訪れたときに休館日だったので、見ることができず、残念な思いをしました。次の機会に訪れたいと考えています。
 パネルやパンフレットでは、市民にもわかりやすく土佐清水の全体的な歴史が示されています。大地の歴史には、大きく3つの段階があり、「深い海の記憶(3800万年前から)」、「浅い海の記憶(1700万年前から)」、「マグマの記憶(1300万年前から)」、そして現在へとつながると説明しています。
 「深い海の記憶」は、四万十層群の堆積の時代で、四国の南部に広く分布するフィリピン海プレートの沈み込みに伴う、付加作用でできた地層です。「浅い海の記憶」は、竜串の海岸に広がる三崎層群の堆積の時代で、浅海でできた地層です。そして「マグマの記憶」が、今回のテーマの花崗岩のことです。
 土佐清水の足摺岬周辺には、中新世の花崗岩が分布しています。この地は以前にも「21 足摺岬:岬の先端に不思議な石がある(2006年9月15日)」というエッセイを書いています。その中で、ラパキビ(rapakivi)花崗岩を紹介しています。
 ラパキビ花崗岩とは、アルカリ長石(割れ目の目立つ鉱物)の大きな結晶(斑晶といいます)の周りに斜長石(色や形状が異なった鉱物)が取り囲んでいる状態になっていることが特徴です。
 フィンランドで最初に記載され研究された岩石です。そのため、北欧の古い安定大陸に分布する岩石で、原生代中期(17億年前ころ)古いものが典型とされています。また、アルカリ長石が大きな斑晶(巨晶といいます)となっていて卵型になっています。他の地域でも同じ特徴をもった岩石が見つかっていますが、いずれの古い時代のものです。
 しかし、土佐清水では、新しい時代(新生代中新世)の岩石となります。また、アルカリ長石は、大きいのですが卵型ではなく、結晶本来の形(自形といいます)をしているようです。ただし、アルカリ長石が斜長石に囲まれているという特徴をもっているため、ラパキビ花崗岩と似ていると考えられます。
 このようなアルカリ長石の結晶の特徴は、結晶化した条件が変化し、ある時から結晶化できなくなり、マグマと反応して周りに斜長石が結晶化したことになります。
 そのようなできた方の説明として、2種類の組成の異なったマグマが混じった(マグマ・ミキシングと呼ばれます)というモデル、花崗岩マグマが圧力低下(温度は少し変化)によって結晶化の条件が変化したというモデル、マグマの流れでアルカリ長石の結晶が沈んで斜長石が付着したというモデルなどがあります。しかし、ラパキビ花崗岩の成因は、まだよくわかっていません。
 足摺岬周辺の火成岩は、全体としてみると、円形の分布をもった深成岩体(累帯状複合岩体)となっています。ただし、太平洋岸で南半分が切れています。火成岩ですが、何種類かのマグマが貫入していて、それが同心円状の構造をもっています。
 まず、中心部に花崗岩があります。そこでは種類や特徴の異なった花崗岩の仲間のマグマがいくつも貫入しています。ここでは、火山岩のアルカリ流紋岩や深成岩の閃長岩などがあり、マグマの活動の時期が何度かあったことがわります。しかし、いずれもアルカリ元素(KやNaのこと)が多いマグマからできた岩石になります。
 その外側に、鉄やマグネシウムの多いマグマからできた斑レイ岩やドレライトなどが、花崗岩に貫入している部分になります。白山洞門の付近ではドレライトが花崗岩に取り込まれているような産状が見られます。ここでは、内部にになかった玄武岩質のマグマが加わり、花崗岩質のマグマと一緒に活動しています。
 もっとも外側に、結晶の大きな(粗粒といいます)花崗岩があります。比較的均質な典型的な花崗岩からできています。このように足摺岬では、内側から外側へ3つの性質の異なった火成岩が分布しています。
 唐人駄場と呼ばれるところは、外側の花崗岩の分布地帯にあります。この地は、奥まって不便なところですが、風化して丸くなった花崗岩が、ゴツゴツと重なりたり割れていたりして、不思議な景観の地となっています。
 説明看板によりますと、海から見たとき、花崗岩が目印となっていたといわれています。千畳敷と呼ばれる平らに岩、鬼の包丁石と呼ばれる鋭角に切れた辺をもった岩、神の居場所など、奇岩があります。また縄文前期の遺跡があったそうです。昔の人もこの地を利用していたようです。このような丸い大きな石からできた地形は、花崗岩地帯にはよく見られます。花崗岩特有の風化によるものです。
 足摺岬は、土佐清水ジオパークの一部に過ぎません。四万十層群や三崎層群も、ジオパークでは重要なサイトになります。これらの地層のでき方はわかっていますが、足摺岬の複雑な花崗岩のでき方は、有名で多くの地質学者が見学に来ています。しかし、まだまだ謎が残されています。今後ジオパークが中心になって解明が進めばいいと思います。

・今後に期待・
土佐清水は、もともと足摺岬や竜串など
名所があるため、観光には有利な地でした。
加えて、地質に興味をもった人も訪れていました。
ジオパークに認定されると、露頭を見にいくとき、
駐車場や案内板、ビジターセンターなどの施設、
また、関連資料などが整っていきます。
地質を見て回るときに非常に便利になっていきます。
まだ、認定されて間もないので、
今後整備されていくことを期待してます。

・唐人・
唐人駄場の説明によると、
唐人とは光り輝く紙の居場所
という意味があると書かれていました。
沖からみると光り輝くことがあり
目印になったということだそうです。
唐人という意味を調べたのですが
いずれも唐の人、転じて異国人
という意味だと書かれているものばかりでした。
光り輝くという意味は
見つけることができませんでした。
特別な由来があるのでしょうね。