2017年7月15日土曜日

151 井倉洞:侵食と共生

 鍾乳洞は、石灰岩の大きな岩体が、流水によって侵食を受けたものです。鍾乳洞の構造して、縦と横の侵食があります。鍾乳洞の侵食構造は、偶然ではなく、ある仕組みがあったようです。

 岡山県の北部の井倉洞を訪れました。中国山地の中にあります。中国山地は、兵庫県から山口の海岸までつづき、1000から1300mほどの標高の穏やかな地形となっています。そんな、山中の大きな川が流れて、深い渓谷をつくっています。中国山地の中央部を縦断するように高梁川があり、その中に井倉洞があります。この周辺には似たような鍾乳洞が多数(200ほど)あり、その多くは阿哲台にあるそうです。
 井倉洞は阿哲台(あてつだい)と呼ばれる石灰岩地帯にあります。阿哲台は、東西15km、南北12kmにわたる標高400から500mのカルスト台地を形成しています。そこにはさまざまなカルスト地形がみられます。阿哲台の高原から高梁川まで200mほどの標高差があります。その間に、5つの地形的な面があり、そのいくつかのレベルに鍾乳洞が形成されています。
 これらの5つのレベルは河岸段丘のレベルと一致しており、段丘が形成される時期に石灰岩が侵食され鍾乳洞の横方向の侵食が起こります。周辺の河岸段丘の時期に、横方向への侵食が起こります。では、その過渡期は、河川や地下水の水位が変化するので、その時に侵食が縦に進むようです。これが縦の穴になっていきます。井倉洞は、75mから70mの高原の次のレベルの4つ目に横に伸びる穴が形成されました。竪穴は段丘面が移動している時に形成されることになります。
 鍾乳洞は侵食(溶解)によってできるのですが、成長はいくつの研究で見積もられています。サンゴの種ごとにスピートが推定されており、堆積速度すると年間0.5~1.5mm程度になります。予想以上に大きな速度になります。実際に、観光用に作られた洞内のコンクリートを流れる地下水で鍾乳石た堆積していますが。そこではこの程度のスピードが納得できるものです。
 井倉洞へは、以前にも訪れたはずですが、あまり記憶に残っていません。もしかしかしたら入ったことがないかもしれませんが。中国山地には、多数の鍾乳洞があります。井倉洞以外に、帝釈峡や秋芳洞なぜなら、記憶が曖昧になっているようです。それは、あとでも述べる日本の地質学的特徴によるものです。
 井倉洞などの鍾乳洞は、大きな石灰岩の台地が流水や地下水で侵食されたものです。そのような石灰岩は、かつて礁(しょう)を構成していた生物によるものです。礁といいましたが、礁をつくるのは、現在ではサンゴですが、時代が違うの礁をつくる生物(造礁性生物)も変わってきます。礁をつくってきた生物は、古盃類礁(カンブリア紀)、層孔虫ー四射サンゴ礁(デボン紀)、六射サンゴー層孔虫礁(ジュラ紀後期~白亜紀最前期)、厚歯二枚貝礁(白亜紀後期)、サンゴ礁(新第三紀~現在)が知られています。
 現在のサンゴは、動物の仲間(刺胞動物の一種)で、ポリプがひとつの生物の単位となっています。ポリプには、単体で生活するものと、集まって生活するものがあります。集まって生きているサンゴを、「群体」と呼びます。サンゴには、褐虫藻という藻類を体の中に住ませているものがいます。褐虫藻は家主(宿主といいます)から栄養と安定した環境を与えられ、自身は光合成をして栄養を生産します。その栄養を宿主に与えています。宿主から一方的に搾取していくものを寄生と呼びますが、両者に益があるばいを、相利共生あるいは単に「共生」といいます。
 サンゴは石灰質の体の外に骨格(外骨格)をもっています。骨格は石灰岩(方解石が成分)からできています。サンゴは、褐虫藻と共生しているため、光の届きやすい浅海に暮らすことになります。住む場所が制限されるのですが、褐虫藻との共生により、外骨格を早く成長させることができます。その結果、礁を形成するほど繁栄できます。
 過去に礁が発達した時代を統計的に調べていくと、大きく3つの時代があることがわかってきました。デボン紀後期、ジュラ紀後期、中新世中期です。日本列島の石灰岩の時代は、石炭紀からペルム紀のものです。ですから世界的に礁が発達史た時代とはずれています。
 それは、日本列島の特徴として、付加体が形成される場が継続していたことが挙げられます。日本列島があった場で礁が形成されたわけではないのです。海洋プレート上に形成された海山や火山島で生育に適した熱帯付近で礁ができます。その礁が、プレートテクトニクスで日本列島まで運ばれ、海洋プレートは沈み込むのですが、石灰岩の塊は、付加していきました。そのため、時代として造礁性生物が繁栄していなくても、成長する環境があり、集積するメカニズム(付加作用)さえあれば、大きな石灰岩地帯をつくることができます。日本列島はその場であったのです。
 井倉洞は、井倉の町から高梁川を挟んだ対岸にあります。大きな滝の下に入口があります。全長1200mに達する長い横穴がメインとなっていて、そこには地下の河川が流れています。また高低差も90mもあり、時に縦の穴が形成され高さ50mの滝もできています。1958年に発見され、翌年には観光開発が進められたものです。見どころと多い鍾乳洞です。

・共生・
宿主と寄生の関係は、
寄生する生物が、一方的に宿主から
栄養などを搾取することになります。
しかし、宿主の大きな影響を与えることは通常ありません。
そうしないと宿主が弱ったり死んだりすると
自分の住処をなくすることになるからです。
多分、生物は一方的に搾取するような生物は
少ないのではないかと思われます。
私たちが知らないだけで、
もしかすると生物とは、ある程度の共生関係が
存在するのかもしれません。

・暑さ・
北海道は7月になり、
気温が高い日が多くなりました。
30℃を越える真夏日が数日続きました。
夜も気温が下がらない日も数日ありました。
北海道に暮らす人は、暑さに弱いです。
もちろん私もです。
北海道の住宅には、暖房はきっちりとしているのですが、
冷房はほとんどありませんでした。
最近は、多くの家でエアコンも
当たり前になってきました。
でも、我が家ではないので
暑さにやられています。